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映画・演劇のレビュー

『台北24時』(『台北異想』)

2012-03-24 22:32:18 | 映画
8話からなる短編連作だ。1本が10分程度という長さ。これだけの尺で何かを表現することは難しい。空の驛舎『追伸』が3話であることについて、先ほど書いたのだが、その直後にこの作品を見たのは偶然なのだが、面白い偶然だ。10分であろうとも、ちゃんと完結するエピソードが描けれる。まぁ、当然のことだろう。ただ、『追伸』で中村さんが8作品、あのレベルで作り、しかも、それを一気に見せて成功できたか、はわからないし、それは難しい話だ。

 大体この作品だってすべて成功しているわけではない。それどころか、ほとんどの作品は失敗作だ。ただ、作品間の差はあるが、トータルな構成が上手くいっているから、収まりがいい。作品の出来不出来は8人の監督の力量もあるし、彼らがそれぞれの語り口で見せるのだから当然のことだろう。だが、そこから生じる格差すら、このドラマを魅力的なものにしている。台北で生きる人たちのスケッチで、それぞれは完全に独立する。これは、そんな「ある24時間」の点描だからこそ、試みとしては成功しているのだ。

 『モンガに散る』のニウ・チェンザーによる3話目のエピソードが一番好きだ。少女と少年がバスに乗り、ほんのささやかな旅をする。たった3時間の小旅行である。僕はこういうのに弱いのだなぁ、と改めて思う。これって昨日見た『星空』と同じパターンである。2人は台北駅行きの環状バスに乗るのだが、駅が来ても降りずに、同じところを何度も回る。しまいにはバスは車庫に入ってしまい、運転手から追い出される。ここからどこかに行きたい。でも、勇気が出ない。そんな2人はしかたなく、家に戻るしかない。朝の9時から12時までの出来事である。

 映画は、朝6時からスタートして、2,3時間刻みで各エピソードが描かれる。8話で24時間になるように作られてある。最後はツァイ・ミンリャン映画でおなじみの役者であるリー・カンション監督によるエピソードで、ツァイ・ミンリャン監督が役者として出ている。夜明け前のカフェ。踊る女。それを見守る男。悪くはない。



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