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映画・演劇のレビュー

HPF2012 箕面東『そして手紙の宛先』

2012-08-13 06:51:50 | 演劇
 後半戦は4本。今年のHPEは2部構成のスケジュール。前半24本。後半4本で合計28本、もちろん28校の参加は過去最大らしい。たくさんの高校がHPFを目指し、力作を持ってくるのは、この企画が高校演劇部にとって魅力的なものだからだろう。リスクは大きくても、そのぶん得るものも大きい。単独公演で小劇場を借り切って、自主運営で1本の作品を作る上げ、入場料を取って(劇団の運営費には当てられないけど)興行をする。客席を埋めた観客は、自分たちの劇のために1000円もの入場料を支払ってくれたのである! その事実に対する感動は計り知れないものがある。だから、その入場料に見合うような芝居を作る義務がある。そんなプレッシャーも、彼らにとっては、きっと心地よいものなのだろう。

 最終作品である箕面東高校のこの作品をなんとか見ることが出来た。仕事の関係で5分遅れて入場する。でも、きっと始まったばかりだ。探偵事務所のシーンだった。そこに10年前失踪した息子の捜索依頼に来る母と娘。オリジナル作品で、1時間50分に及ぶ大作である。永遠の命の話なのだが、それが何を目指すのか、これではちゃんと伝わらない。

 正直言うと、つながりもよくわからないし、シーンシーンがバラバラで、まとまりのない作品である。言いたいことはわからないでもないけど、これではまるで観客には伝わらないはずだ。力のこもった大作だし、壮大なロマンを描こうとした意図はわかる。だが、構成力がまるでないから、見ていて、疲れてくる。いつまでたっても終わらない。でも、気合が入っているから、ついつい見入ってしまう。でも、それが次のシーンにちゃんとつながっていかないから、がっかりする。せっかく頑張って見たのに、と思う。話が有機的につながらないのは、致命的欠陥だ。作者のなかではちゃんとつながっているのだが、それがまるで観客には届かない。独りよがりでしかない。

 だが、この作品を否定する気はない。見ていて、なんだかうれしくなる。これは高校生らしい野心に満ちた作品だからだ。いくつものイメージが溢れかえる。収拾がつかないまま、全部投げ込んじゃえ、って感じだ。分からない奴はあほだから、自分たちは分かってくれる人のために作るのだ! って感じ。そういう傲慢さは僕は好き。こういうのは混沌とは言わない。稚拙というのだが、そんな稚拙さを前面に押し出すことができるのが、高校生の魅力なのである。そのエネルギーに、共感する。そこから、きっと凄い何かが生まれる。

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