さらにはあのローランド・エメリッヒ監督作品なのである。悪条件はどこまでも重なる。大味な大作映画を作るB級監督という評判で、最初のハリウッド版『ゴジラ』を作って大ひんしゅくを買った人だ。その後も、どこかで見たような、ディザスター映画『デイ・アフター・トゥモロー』とか。なんともトホホな監督なのだ。そんな彼がなぜか、こんな誰もが忘れたような映画を再び手掛けた。しかも、自分の企画だ。(たぶん) 60代になって、かっての自分の仕事の中でも、特別だったこの作品を、今の最新技術。で総力を挙げて挑む。これはもしかしたら、いろんな意味で凄いものになるかもしれない、と期待する。(本気で)
もちろん、「とんでもなくつまらないものになる」とも、確信している。そんなこんなの結構相反する想いがこの映画には相半ばするのだ。だからちょっとしたギャンブルのつもりで、見に行くことにした。この手のものは大スクリーンで見なくては、虚しい気分になること必至の映画なので、公開してすぐに行く事にした。今なら一番大きなスクリーンで上映している。(9日公開だから、まだ1週目なので、東宝自慢のラージ・スクリーンだ!)
結果発表です! なんだか凄すぎる。不自然なくらいにいっぱいいっぱいで、圧倒的なスケールの映画なのだ。だから、もう期待通りの大作仕様。ということ。うぉ、うぉ、と唸りながらスクリーンを食い入るように見る。そんなふうに無邪気になれたなら、そして、そのまま最後まで見れたならきっと幸せなのだが、この手の迫力映像にはもう食傷気味。どんな凄い映像を見せられても、所詮CGだし、と醒めてしまうし。(ということは、もう先日の『アリス・イン・ワンダーランド時間の旅』のところでも書いた。)そんなこんなで、確かに頑張っているし、ビジュアル的にもなかなかなのだ。飽きさせない展開でもある。しかし、である。なんだか新鮮味に欠ける。
ここで大事になるのは、ストーリーの面白さ、それしかない。では、これはどうだったか、というと、昔ながらの大味で、だんだん退屈してくる。地球人が力を合わせてエイリアンから地球を守るんだ、なんていうしょぼいお話をどれだけお金をかけて驚きの映像で見せられても、なんとも思わない。しかも、別の宇宙人に助けられて、という展開もあまりに安直。こういうアナクロ企画を大真面目にこの2016年に作るという感性には驚嘆するしかない。進歩がないというよりも、この変わらなさはちょっとした感動を呼ぶ。勘違いも甚だしい。というか、これは化石のような頑なさ、としか言いようがない。それはそれで凄い。
キャストも20年前のまま年をとり再登場する。ビル・プルマンなんて久しぶりだし、『ザ・フライ』のハエ男、ジェフ・ゴールドブラムも懐かしい。シャルロット・ゲンズブールなんかがこんな映画に出ていて驚かされる。中華圏からはアンジェラ・ベイビーがキャスティングされている。(今、ハリウッドにとって中国はアメリカ本土の次の巨大マーケットだからね)
世界中を舞台にして、驚愕のパニック・シーン満載で、ド派手な映画を作った。3D映画ならではの、迫力映像も、この手の映画のお約束。2時間、少し退屈はするけど、そこそこには楽しめる映画にはなっていた。それにしても技術の進歩は著しい。それに人間の感性がついていけない。