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映画・演劇のレビュー

劇団未来『チェーホフは笑いを教えてくれる』

2010-06-20 21:03:17 | 演劇
 劇団未来のアトリエで芝居を見るのは久しぶりのことだ。そう、今回は野江にあるアトリエ(劇団未来ワークスタジオ)での本公演である。そのことも楽しみだった。自らのホームグランドで、軽やかなタッチでこの笑劇を見せてくれたならいいなぁ、と期待した。この作品はMONOの土田英生が、チェーホフの4つの短編を、日本に舞台を移し替えて書き換えた作品だ。それを劇団未来が取り上げる。軽妙な土田作品を演出の森本景文さんがどう料理するのか、興味津々で劇場へ。だが、結果はちょっと残念な仕上がりの作品となった。

定員50名の小スペースだが、タッパは十分あるし、舞台もかなり広い。この小さな話にとっては充分すぎる広さだ。数人の男女がここで迷子になっている。彼らは「チェーホフ」を待っている。謎の人物であるチェーホフとは何者なのか。4話のブリッジとして、描かれるこの部分があまり上手く機能していない。ロシアの有名な劇作家ということくらいしか、知らない「チェーホフ」は本当は何者で、彼を待つこの男女は何のためにここにいるのか。それが4つの話を通して見えてくるはずだった。でなくては意味がない。もともとの台本の弱さを、本作も引きずることとなったようだ。

ちょっとした齟齬や、勘違い。聞いているようで、その実はまるで人の話なんか聞いていない人たちの会話劇を通してコミュニケーションの不在を描く、なんていうわけではない。もっともらしいことをいいながら、何も中身のない会話の実体とか、関係ない。彼らが交わす会話を通して描かれる笑いはもっと弾けなくてはならないはずだった。なのに、なんだか芝居が固い。ちょっと真面目すぎて、これでは話自体の面白さが伝わりきらないのだ。



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