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映画・演劇のレビュー

いしいしんじ『雪屋のロッスさん』

2009-09-11 18:45:41 | その他
 これには驚いた。いや、この小説に、ではない。この小説を既に読んでいたのに、そんなことすら忘れていた自分に、である。「ぼけ」もここまで進むとちょっとやばい。だいたい奥付を見ると3年前の日付が!それってあんまりではないか。まぁ、記憶に問題があるのではなくぼんやりさんなのだが、それにしてもどうかしてる。タイトルくらい記憶しておいてよ、と思う。内容は読めばすぐ忘れるのは最近の特徴だし、仕方ない、とあきらめてるが、読んだか否かくらい覚えてなくてはねぇ。

 最近いしいしんじが僕の中でリバイバルしている。『ぶらんこ乗り』を読んでノックアウトさせられ、それからはずっと新刊が出る度必ず読んでいたはずが、いつのまにか、ご無沙汰になり、時々気がつけば、状態になっていた。だから記憶にないものを旧作から順次読んでいたのだが、この掌編集はうかつだった。まぁ、もちろん数編読んだときにこれ読んでるよ、と気がついたのだが。

 つまらなかったから忘れていたというわけではない。むしろ、その反対だ。これはとても素敵な作品である。30篇の短いお話はすべて、とある人の話だ。もちろんそれはひとりの人ではない。30人のさまざまな職業の名もない人々のお話である。彼らの仕事に関するエピソードから、彼らの人となりが語られる。これはきっとどこにでもいる、なんでもない人々の、でも、とても愛おしい人たちのポートレートである。読んでいて思わず抱きしめたくなる。結局、もう一度途中でやめるつもりだったのに、読み切ってしまった。さりげなさ過ぎて読んだ端から忘れるくせに。

 あんまり素敵過ぎて、忘れた、なんて「そんなあほなお話」でしたとさ。 

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