北村薫は『スキップ』『ターン』『リセット』の3部作に尽きる。だからその他の膨大な作品はあまり読んでない。ミステリー作家として活躍する北村さんの読者としてはダメダメなのだが、仕方ない。青春小説である、あの3作のイメージが強すぎてどうにもこうにも仕方ないのだ。
それに僕はミステリーは好きではない。推理ものなんて読む気もしない、という人だから仕方ない。なのに、今回この小説を読んだのはただ単に読む本がなかったからだが、でも、なんとなく直木賞受賞作という冠に魅かれたのかもしれない。あぁ、俗物だなぁ。でも、北村さんがついに直木賞を取ったのだからその記念に読むのも悪くはない、と思った。「シリーズものだから第1作から読まなくていいんですか」と、うちの学校の図書館のお姉さんに言われたけど、「大丈夫です。つまんなかったら途中でやめるので、どどんと直木賞から勝負します」とかわけのわからないことを言う。
読み初めて、すぐ、予想通り夢中になった。主人公の女学生、英子の日常生活のスケッチが心地よい。事件は実に単純で、事件の顛末よりそこを起点にした周囲の人々のドラマがおもしろい。昭和初期という時代背景が見事に効いている。ワンス・アポン・ア・タイムの出来事の世界に迷い込んで、そこを浮遊する。楽しい。見たこともない過去の世界は一種のワンダーランドだ。お嬢さまであるヒロインのちょっとおてんば振りも微笑ましい。そして、彼女を支える「ベッキーさん」(彼女のお付きの運転手である)こと、別宮さんが実に凛々しい。この2人が事件に挑む。
これがTVドラマになったなら、きっとユルイものになるはずだ。小説だからこそ、このなんとも言い難い微妙な空気感が伝わる。これは本格ミステリではない。昭和10年という一つの時代の世相や風俗を背景にして、暗い時代へと突入していく直前の自由な気分を描いた青春小説でもある。
ただのミステリなら、きっと途中で退屈したはずだ。謎解きには興味ない。もちろん上質のミステリはいつもきちんと人間が描かれている。だが、お話の力点が謎解きに置かれているものはやはり苦手だ。この小説ぐらいがギリギリだろう。ラストは衝撃的。
それに僕はミステリーは好きではない。推理ものなんて読む気もしない、という人だから仕方ない。なのに、今回この小説を読んだのはただ単に読む本がなかったからだが、でも、なんとなく直木賞受賞作という冠に魅かれたのかもしれない。あぁ、俗物だなぁ。でも、北村さんがついに直木賞を取ったのだからその記念に読むのも悪くはない、と思った。「シリーズものだから第1作から読まなくていいんですか」と、うちの学校の図書館のお姉さんに言われたけど、「大丈夫です。つまんなかったら途中でやめるので、どどんと直木賞から勝負します」とかわけのわからないことを言う。
読み初めて、すぐ、予想通り夢中になった。主人公の女学生、英子の日常生活のスケッチが心地よい。事件は実に単純で、事件の顛末よりそこを起点にした周囲の人々のドラマがおもしろい。昭和初期という時代背景が見事に効いている。ワンス・アポン・ア・タイムの出来事の世界に迷い込んで、そこを浮遊する。楽しい。見たこともない過去の世界は一種のワンダーランドだ。お嬢さまであるヒロインのちょっとおてんば振りも微笑ましい。そして、彼女を支える「ベッキーさん」(彼女のお付きの運転手である)こと、別宮さんが実に凛々しい。この2人が事件に挑む。
これがTVドラマになったなら、きっとユルイものになるはずだ。小説だからこそ、このなんとも言い難い微妙な空気感が伝わる。これは本格ミステリではない。昭和10年という一つの時代の世相や風俗を背景にして、暗い時代へと突入していく直前の自由な気分を描いた青春小説でもある。
ただのミステリなら、きっと途中で退屈したはずだ。謎解きには興味ない。もちろん上質のミステリはいつもきちんと人間が描かれている。だが、お話の力点が謎解きに置かれているものはやはり苦手だ。この小説ぐらいがギリギリだろう。ラストは衝撃的。