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映画・演劇のレビュー

中島京子『ハブテトル ハブテトラン』

2009-02-06 23:33:34 | その他
 なんだか読んでいて嬉しくなる。こういう少年小説って、上手くできた作品は愛おしい気分にさせられる。『チェスト!』も好きな小説だったが、この小説も大好き。広島県、松永という町が舞台らしい。この瀬戸内海の田舎町が実に魅力的だ。ここで暮す人たちを実に気持ちよく描いている。なんだか懐かしい。昔ながらの町。おじいちゃんとおばあちゃんが住むこの町で過ごす夏から秋が描かれる。大好きな尾道も舞台になっている。

 少年の再生のドラマ。学校に行けなくなった小学5年生の少年がこの田舎町にやってきて、復活する。自転車で今治まで旅するエピソードをクライマックスにもってきて、爽やかな風が吹き抜けていくような小説。主人公のダイちゃんとハセガワさん(近所の不良老人)のやり取りが楽しい。彼の淡い恋(転校したサノタマミに会いに行く話と、同級生のオザヒロの話の2本立)を中心に据えて、一気にラストまで駆け抜けていく。『チェスト!』のように、これも映画にならないかなぁ。

 ラストで彼はもう一度東京の学校に戻る覚悟をするが、みんなが言うように嫌ならまた松永に戻ればいい。あの最悪な担任教師ともう一度向き合うなんて無意味だ。それにオザヒロのようなかわいい女の子を捨てて東京なんかに帰る必要ない。

 これってなんだか昔懐かしい日活青春映画の子供バージョンみたいだと思った。吉永小百合の『明日の花嫁』とかを思い出したよ。

 

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