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映画・演劇のレビュー

『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』

2009-02-09 21:24:05 | 映画
 『パンズ・ラビリンス』の成功を受けて、再びギレルモ・デル・トロが本来のフィールドに戻ってきて好き勝手の限りを尽くす最新作である。よくぞここまでやってくれた。どんなことでも極めるというのは凄い。ちょっとアート系の映画で成功したらもうバカな映画には戻らないし、かっての自分の仕事を反故にしたいと思うような輩もいるが、デル・トロはそんな奴らとは違う。彼は筋金入りの超オタクだ。だいたいいつものタッチは抑えて作ったはずの『パンズ・ラビリンス』ですらいつもの過剰なイメージはちゃんと残していた彼である。それのそこがあの映画をチャーミングなものにしていた気すらする。

 さて、今回は第1作の『ヘルボーイ』以上に過剰で端から端までデル・トロ・カラーで塗り込めた。この素材を自由自在に使いこなしている。クリーチャーの数も半端ではない。もうやりたい放題だ。周囲のスタッフはさぞや大変だったろう。だが彼らもまたデル・トロ・ワールド実現のために粉骨砕身、協力を惜しまない。全力投球である。ほんとうに好きなんだなぁ、と思う。だからこんなに素敵な映画に仕上がったのだ。一切手抜きなし純度100%のファンタジー・アクションだ。

 レトロな雰囲気の漂う街、NYを舞台にスペクタクル満載。米政府の秘密機関である超常現象捜査防衛局なんていうアホっぽいセクションに所属するヘル・ボーイたちが人間には知られることなく魔物たちと戦っていく様を追っていく。今回の敵はゴールデン・アーミーと呼ばれる最強の軍隊を率いることになる魔界のプリンス。まぁ、お話のほうはどうでもよろしい。よくあるパターンでしかない。だが盛りだくさんのお話を上手く捌いており、退屈させない。

 それより何よりこれはデル・トロのマニアックな拘りが細部まで行き届いた愛おしい作品だ。こんなにもたわいない話にこれだけのものを注ぎ込んだ愛情は並ではない。冒頭の人形劇で人間と魔界の戦いを語るシーンから一気に作品世界に誘われる。赤鬼にしか見えない強面のヘルボーイのちょんまげもかわいいし、とても幸せな気分になれる映画だ。

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