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映画・演劇のレビュー

『台湾、街かどの人形劇』

2023-08-08 14:43:00 | 映画

これは台湾のドキュメンタリー映画。というより、これはまず父と息子の物語。原題は『紅盒子 Father』。そちらが今の僕には確実に興味深い。明日、ジェーン・バーキンとシャルロット・ゲンズブール母娘を描くドキュメンタリー映画を見るからその前哨戦としてこの作品を見ることにした。

 
2019年公開の映画で、ホゥ・シャオシェン監督の最高傑作である『恋恋風塵』の祖父役で異彩を放ち『戯夢人生』では主演したリー・ティエンルーとその息子を描く作品。
 
台湾の伝統芸能・布袋戲(ポテヒ)の人形師である人間国宝チェン・シーホァン(陳錫煌)。80代になる彼を中心とした周りの人々との交流を10年にわたって撮り続けた映画であり、彼の有名過ぎる父リー・ティエンルー李天祿)との確執を背景にして描かれる。父の後を継ぐはずの長男であるチェンは何故父と反目することになるのか。彼は長男だから、父の姓を継げず母方の養子にされチェン姓を名乗ることになる。日本人である僕たちにはなんだかよくわからないそんな事情が描かれる。だが、それがまずふたりの関係性のスタートになった。
 
映画は父の死後、60代になっていたにも関わらずまだ、「あのリー・ティエンルー」の息子、と呼ばれるチェン・シーホァンの苦悩が描かれる。同時に、彼が人形師として今や忘れさられようとする布袋戯を次世代に伝える姿が描かれる。個人的な想いと芸術家としての想い。そのふたつの狭間で生きる10年間に及ぶ記録はさまざまな想いをあらゆる角度から切り取る。最後には渾身のパフォーマンスが描かれる。必見。
 
 

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