これは全く見る予定ではなかった映画だ。ほかの映画を見に行ったら満席で見れず時間がもったいないから見れるものを見ることにした。他に選択肢がなかったので、これを仕方なく見た。なのに、予想外に面白くてなんだか少し得した気分。よかった。ヤンキーの喧嘩映画なんて、今時見たくもないし、英勉監督の映画はいつもがっかりさせられる作品ばかりだったし、と不安要因ばかりだったのだが。結構抑えたタッチで最後まで崩れない。高橋泉の脚本だったのがよかったのだろう。
役者たちも、こういうマンガ設定なのに、シリアスに演じていて悪くはない。特に主演の北村匠海がいい。狂言回しなぜか納得させる。こんなにも情けない男を主人公にして、実は彼が凄かった、というよくあるパターン(『地獄の花園』の永野芽衣!)は使わないで、最後まで情けないけど、なぜか敵の番長に気に入られたりして、なんとか乗り切るのは立派。弱いけど、自分の意志を曲げない頑固さがいい。
10年前にタイムスリップして、再び悪夢の高校時代をくりかえす、という基本のお話から、どんどん先の読めない話へとうまくスライドさせていき、退屈させない。やりなおすことで歴史を変えることが可能か。その挑戦をさりげなく見せていくのだ。小さな映画だし、ばかばかしい話だけど、とてもうまくまとめている。
これであと少し「何か」があれば感動したかもしれないけど、英勉にそれを望むのは酷かもしれない。このくらいの軽さで最後までちゃんと突っ走るだけで大健闘だ。2時間息切れしない映画になっていた。それだけで十分。