「劇団青い鳥スモールワールド」と銘打たれてある。「スモールワールド」というのがいいな。今回は3人芝居。といっても実質は、2人芝居と言っても問題ないだろう。兄と妹の話だ。兄は40代後半のオカマで、妹は30代後半のフリーター。母親の3回忌に2人で行くのだが、なんか周囲から浮いてしまい、逃げて帰る。母の葬儀にも行けなかった。そして、今回も、である。兄は当然女装していて、親族から勘当されている。妹も同じような立場だ。そんな2人が久々に一緒に過ごす時間が描かれる。その日の夜、妹の部屋に来て、彼女の生活に触れる。2人はもちろんもう大人で、別々の生活をしているから、お互いの今のことを何も知らない。だが、ほんの一瞬一緒にいて、話をして、なんとなく、今の自分たちのことが見えてくる、気になる。大根を生で齧る妹(森本恵美)がすごい。ただそれだけの奇行が彼女のいろんなことを伝える気がする。そんな彼女を受け止める兄を天衣織女さんが演じる。
大好きだった青い鳥がウイングフィールドにやってきた。「だった」と過去形にしてしまったのは、久しく見ていないからだ。あんなに大好きだったのに、気がつくと足が遠のいていた。オレンジルームで『夏の思い出』を初めて見たときの感動は忘れない。それ以降ずっと彼女たちの大阪公演は見てきた。でも、木野花が86年に退団した頃から徐々に見なくなる。80年代あれほど熱狂していたのに。同時に、僕の芝居に対する純粋な熱も醒めた。まぁ、今、こんな昔話なんかしても仕方ない。
そんなことよりも、まず、これはとても面白いし、緊張感のあるいい芝居だ。90分間とても心地よい時間を過ごせた。今も、彼女たちが自分たちのペースで芝居を作り続けている。そのことが、なんだかとてもうれしい。
芝居自体は、タイトルにもあるようにささやかで小さな作品だ。だから、ウイングという小屋にぴったり合う。劇場と作品というものは本来切っても切れない関係にあるべきで、小屋のスケールと作品自体のスケールがぴたっとマッチした時の快感がここにはある。兄と妹の話だったのに、それがどんどん変化していく終盤の展開もすばらしい。ベケットの『ゴドーを待ちながら』の引用とか、ある種のパターンなのだが、それぞれひとりで生きる中年の域に達した「あにいもうと」が、やがて来る老いも含めて将来を思い、ここでこれからの人生に想いを寄せる。そんなある瞬間のスケッチとして全体がきちんとまとまっている。見事だ。作、主演は天衣織女さん。演出、市堂令というのも、うれしい。
大好きだった青い鳥がウイングフィールドにやってきた。「だった」と過去形にしてしまったのは、久しく見ていないからだ。あんなに大好きだったのに、気がつくと足が遠のいていた。オレンジルームで『夏の思い出』を初めて見たときの感動は忘れない。それ以降ずっと彼女たちの大阪公演は見てきた。でも、木野花が86年に退団した頃から徐々に見なくなる。80年代あれほど熱狂していたのに。同時に、僕の芝居に対する純粋な熱も醒めた。まぁ、今、こんな昔話なんかしても仕方ない。
そんなことよりも、まず、これはとても面白いし、緊張感のあるいい芝居だ。90分間とても心地よい時間を過ごせた。今も、彼女たちが自分たちのペースで芝居を作り続けている。そのことが、なんだかとてもうれしい。
芝居自体は、タイトルにもあるようにささやかで小さな作品だ。だから、ウイングという小屋にぴったり合う。劇場と作品というものは本来切っても切れない関係にあるべきで、小屋のスケールと作品自体のスケールがぴたっとマッチした時の快感がここにはある。兄と妹の話だったのに、それがどんどん変化していく終盤の展開もすばらしい。ベケットの『ゴドーを待ちながら』の引用とか、ある種のパターンなのだが、それぞれひとりで生きる中年の域に達した「あにいもうと」が、やがて来る老いも含めて将来を思い、ここでこれからの人生に想いを寄せる。そんなある瞬間のスケッチとして全体がきちんとまとまっている。見事だ。作、主演は天衣織女さん。演出、市堂令というのも、うれしい。