習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『卵』

2012-01-29 22:09:57 | 映画
 久々にトルコ映画を見る。劇場公開時とても見たいと思っていた作品だ。『蜂蜜』というタイトル。監督はセミフ・カプランオール。これは3部作になっていて、その第1作がこの『卵』である。悩んだけど、順を追って見ることにした。主人公の壮年期を描く『卵』から時代は遡り、青年時代を描く『ミルク』を経て、少年期を描く『蜂蜜』に到る。3本借りてきたのだが今日は『卵』。

 正直言ってこれはやりすぎだ、と思った。説明の排除もここまでいくと、作者のわがままでしかない。懇切丁寧に描く必要はないけど、せめてガイドラインぐらいはちゃんと用意しえるのが作り手のおもてなしではないか。そっけなさをスタイルにしたのかもしれないが、これではただの独りよがりだろう。自分のわがままなスタイルを押し付けたいのなら、映画にする必要はない。

 母親が死んでしまい、故郷の村に帰る。葬儀と、その後の始末が描かれる。彼がどうして母に対してそっけないのか、その理由はここでは一切描かれない。2人の関係性もわからない。父親はどうしたのかも、わからない。だいたい、彼の母親の世話をしていた若い女性が誰なのかもわからない。親戚かなんかなのだろうが、そこまでである。彼女と主人公である彼が2人で過ごす数日間が描かれる。母の死後の心情が背景にはある。淡々とした流れで特別なドラマもなく、終わる。彼女は彼に淡い恋心を抱くがそれがどうなるでもない。

 それにしてもワンシーンが長い。5分くらいはゆうにある。そのくせ、そこでは何も起きない。ただただ何もないのに、徒に長回しする。もちろん作者には意図があるはずだが。よくはわからない。心地よい、と言えばまぁ、そう思わないでもない。

 主人公は、故郷を離れて、都会で暮らす詩人で、古本屋をイスタンブールで営む。年老いた母親を残して。都会での生活を描くシーンが簡単にあり、すぐ、訃報を聞き、村に帰るシーンとなり、そこでの日々がそっけなくスケッチされ、終わる。あっけない映画だった。音楽もない。せりふもほとんどない。ドラマもない。何もない。だが、なんだかよくわからない臨場感がある。実はこんな映画なのに、なんだかおもしろいのである。2作目が、楽しみだ。

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