実写映画化された『鋼の錬金術師』はとても残念な作品だった。壮大なスケールで描かれるはずのお話が、なんだかとても小さな世界にすっぽりと収まってしまう。圧巻のSFXで描かれたはずのビジュアルは、そんなつまらないお話の中に収められて、なんだか書割然として、しょぼい。『ピンポン』や『あしたのジョー』という実写化不可能と思われた漫画を優れたあれだけの映画に仕立てた曽利文彦監督なのに、どうしてこんなことになったのか、と驚くばかりの出来だったと記憶している。あれから5年。これは起死回生の2部作である。前回の失敗をどういうふうに修正したのか。そこに期待した。同じ失敗はないはずなのだ。
前作のキャストがちゃんと勢揃いして、さらには新しいキャストを迎えて万全の態勢で挑んだ(はずだ)。だが、なんと信じられないことだが、また同じことをしている。描くべき世界観を確立していないのが最悪だ。だから、ストーリーもつまらない。これを成功させるためには、膨大な原作の中からそのエッセンスを抽出し、独自の作品世界を組み立てるための優れた台本が必要だ。なのに、表象的なお話を追うばかりで、この物語の提示するはずの「世界」が見えてこない。書割然とした空間は前作の二の舞。そこで多彩な登場人物が、顔見世程度に右往左往するばかりで、肝心のお話がここにはない。だから見ていて退屈してくる。どうしてこんな脚本でGOしたのだろうか。わけがわからない。
ワーナーは昨年同じように2部作で公開され、コロナ禍にもかかわらず大ヒットした『るろうに剣心』と同じパターンで、本作でも2カ月連続公開という体制に挑むのだが、この前篇を見た限りでは、この先に期待はできそうにない。剣心に続き同じような悪役に挑んだ新田真剣佑も今回は精彩を欠く。これはせっかくのチャンスだったのだ。なのに曽利監督はこの大作をコントロールしきれていない。これだけの豪華キャストがバラエティ番組並みのコスプレ芝居に埋もれてしまう。無残だ。