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映画・演劇のレビュー

『シュレック フォーエバー』

2011-01-13 22:25:16 | 映画
 シリーズ第4作にして、完結編。今回は今はやりの3D映画として公開される。もうシュレックはいいだろう、という周囲の感想を敏感に感じて、本作は最初からなんだか完全店じまい状態で公開される。だれもこの映画に期待しない。

 だが、それが反対によかったのではないか。だんだん興行成績も落ち込んできて、これが最後、ということで、ある種の諦念が作品を覆う。今回は、幸せな毎日の中で、退屈を感じたシュレックが、ストレスといらだちを感じる、というお話である。

 肩の力の抜けた作品になっているのがいい。手を抜いているのではない。それどころか、とても丁寧に作られてあり、お話もよくできている。おとぎ話のハッピーエンドの後に続く平凡な日常が描かれたおとぎ話なんて、めったにあるまい。これがつまらないわけがない。

 それにしても、シュレックが求めた刺激って何だろうか。生ぬるい現実の中で、幸福を手にした代償として、彼は自由を失って、ストレスをどんどん貯め込んでいく。冒険のない平和な毎日にうんざりする。

 シュレックは間違ってはいない。彼は家族を失って、ひとりぼっちになって、そこから自分の物語を見つけていく。とても危険で、でも、刺激的な物語だ。その中で、彼は死と向き合うこととなる。たとえ、あそこで、死んでしまっても、彼は本望だろう。後悔なんかない。再びハッピーエンドに繋がる幸福なラストシーンは、新たなるストレスの始まりである。

 でも、彼はもう冒険を求めたりはしないのか。そんなことはない。あそこで朽ち果ててしまうなんてこりごりだ。彼はまた危険な冒険という刺激を求めてしまうはずだ。子供の面倒を見て、おとなしくフィオナの尻に敷かれているよりも、ひとりで凶暴なお尋ね者のモンスターとして、みんなに恐れられているほうがいい。幸福という名の牢獄に囚われて少しずつ朽ち果てるなんて、モンスター、シュレックには似合わない。

 人は誰のために生きるのか。フィオナと子供達のために、みんなの幸せを守るために。いや、そんなことではない。自分のために生きるのである。そのためには、みんなから嫌われてもいい。自由気ままに生きるほうがいい。


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