西加奈子のこの小説が映画になる。それだけでも驚きなのに、アニメーション映画である。ありえない。だけど、あり得た。しかも、肉子ちゃんがトトロである。大竹しのぶがボイスキャストを演じる。明石家さんまがプロデュースしてるって。だから製作は吉本興業だし。冗談のような映画なのに、冗談ではない。というか、本気である。中途半端な映画ではない。
これはありえないような冒険がなされたアニメ映画なのだ。この小説を実写ですると暗くなる。アニメでデフォルメすることで、ファンタジーになる。『となりのトトロ』のようなお話になった。でも、この映画のトトロは実は肉子ちゃんなので映画の中にちゃんとリアルに実在する。でも、まるで彼女の存在はファンタジーなのだ。そのへんのバランス感覚が素晴らしい。だからこれは宮崎駿と高畑勲の間を行く映画なのだ。『トトロ』と『おもいでぽろぽろ』ね。(さすがに『火垂るの墓』はない)
暗くて重い話になりそうなのに、そうはならない。主人公の小学5年生の喜久子(漢字あってるかな)がとても大人で、トトロのさつきのような少女なのだ。賢い子で、いろんなことで悩んでいるけど、自分でひとつひとつちゃんと解決していく。そんな彼女を見守るだけで元気にさせられる。でも、彼女がそんなふうにできるのは実は母親である肉子ちゃんのおかげなのだ、と彼女自身がちゃんとわかっている。(肉子ちゃん本人はまるで気づいていないけど。たぶん)いろんなところを流れ流れてここまでやってきた親子が、とろあえず今はここで暮らしている。この先なのがあるのか、不安だらけだ。だけど、彼女たちはくじけない。笑っている。誰だってどこにいたって不安は消えることはない。だから、今を楽しもうと思う。