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映画・演劇のレビュー

『ビースト・オブ・ノー・ネーション』

2021-10-04 16:30:32 | 映画

これは『闇の列車、光の旅』の監督としてだけで記憶していたキャリー・ジョージ・フクナガ監督のデビュー作である。3日前念願の彼の新作、というより007の最新作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』を見た後、それにしてもなぜフクナガ監督が007にオファーされたのかが気になり、彼のフィルモグラフィを調べたらこの作品が出てきたのでさっそく見ることにしたのだ。2015年作品、2時間17分の大作だ。地味で小さな作品だった『闇の列車、光の旅』より前にこんな大作作品を手掛けていたなんて意外だった。今回の007に彼が抜擢されたのはこの映画があったからだったのか、と納得する。エンタメではないけど、どんどん観客を引き込み、提示したテーマにしいてしっかり考えされる。その姿勢は今回の007にもつながる。

これは西アフリカのとある国を舞台にした戦争映画である。少年兵テロリストがどういう経緯で生まれるかを、ひとりの少年のたどった時間を通して描いていく。

家族を失ったひとりの少年が武装集団の指揮官につかまり兵士として生きていくことなる。無邪気だった少年が戦場で人を殺し、どんどん変わっていく。変わらざる得ない。これはある種の象徴的なドラマなのだが、現実にこういうことが世界中で起きている。戦争の悲惨を描く映画は数あるけど、子供がこんなふうにスポイルされていくパターンは痛ましい。もう昔の彼には戻れない。一見平和な日常を取り戻したようにも見えるラストシーンがつらい。少年は老人のようになり、抜け殻になり、目が死んでいる。

これだけのスケールの映画を監督第1作として作り上げたフクナガ監督に拍手を送りたい。自分の信念を貫き、妥協なく映画作りに励む姿勢は素晴らしい。撮影は各区だったはずだし、こんな企画にお金がなかなか集まらなかったはずだ。これがなんとnetflix映画の第1作だったということを知り、改めてnetflixの偉大さを再認識する。


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