久しぶりに見る林英世さんの一人語りは、松本清張のミステリー小説。これはとても難しい題材だ。しかも、ドラマチックにはならない展開である。男女の道行きを静かなタッチで描いて行く。もちろんミステリ仕立てなので、ラストのオチに至る部分はかなりドキドキするし、おもしろいのだが、そこに至るまでの何も起こらない部分がフラットになる。しかも、そここそがこの作品の見せ場だということなので、淡々としたここをドキドキさせなくては意味がない。東京から博多へ。さらには熊本、鹿児島へ。心中のための旅。
着服した35万円(昭和30年代くらいを背景にしているのではないか?)を持ち、死の逃避行をする彼らがいつ捕まるか、というサスペンスにはもっていかない、ということも、この作品のねらいなので、故意にミスリードさせるような演出もできない。正攻法で挑む。ひとり語りにおいてはそういうバランスが命取りになったり、成功につながったりの綱渡りだ。だから、フラットな展開がサスペンスフルなのである。
林さんはそんなギリギリの綱渡りを見事成し遂げた。表面的には何の仕掛けもない1時間のリーディング。もちろん、照明も音響も使わない。しかし、オリジナル小説の内容、構成を信じ、その困難に真正面から挑んだ静かな語り口で、緊張感を持続させ、ラストまで一気に持ちこむことに成功している。
着服した35万円(昭和30年代くらいを背景にしているのではないか?)を持ち、死の逃避行をする彼らがいつ捕まるか、というサスペンスにはもっていかない、ということも、この作品のねらいなので、故意にミスリードさせるような演出もできない。正攻法で挑む。ひとり語りにおいてはそういうバランスが命取りになったり、成功につながったりの綱渡りだ。だから、フラットな展開がサスペンスフルなのである。
林さんはそんなギリギリの綱渡りを見事成し遂げた。表面的には何の仕掛けもない1時間のリーディング。もちろん、照明も音響も使わない。しかし、オリジナル小説の内容、構成を信じ、その困難に真正面から挑んだ静かな語り口で、緊張感を持続させ、ラストまで一気に持ちこむことに成功している。