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映画・演劇のレビュー

劇団ひまわり大阪『ROMEO+JULIET」THE MUSICAL ロミオとジュリエット』

2010-04-08 21:47:49 | 演劇
 『ロミオとジュリエット』をミュージカルとして、46名×2という凄まじいキャストで上演する。これは俳優養成所による発表会でも、あるのだが、単なるルーティーンワークではなく、今と言う時代にむけて、大塚雅史さんが問う壮大なメッセージでもある。頼まれ仕事として、ビジネスライクにこなすのではなく、この困難な作業を通して、作家としての自分の姿勢を明確にし、このメンバーを引き連れて、誰かのためではなく、自分のための芝居を作り上げていくという当たり前のことに挑んだ野心作である。

 シェイクスピアの悲劇をベースにしながら、その先に明るい未来を見出そうとする姿勢はランニングシアターダッシュで、彼がやり続けてきたことの延長戦上にある。このアプローチは間違ってはいない。和田俊輔によるオリジナルナンバーの数々もその意図をしっかりと汲み取った前向きで力強い楽曲ばかりで、それを元気いっぱいの子どもたちが、エネルギッシュに体現している。

 台本にはストーリーの書き換えはない。ロミオもジュリエットもちゃんとバカな死に方をする。子どもだから思慮が足りないとか、彼らを助けるはずだった神父の浅はかな作戦が見事失敗するとか、原作通りである。そこを変えれば、この台本を使う意味はなくなる。その代わり、『ウエストサイド物語』のマリアとトニーの話をサイドストーリーとして、持ってきて2つの話を融合させながら、トニーとマリアの話の方は大幅に改稿を施し、この2組の愛の物語の先に未来に向けての希望を見出そうとする。甘いといえばこれ以上に甘い芝居はない。しかし、舞台からこぼれおちんばかりの子どもたちの大熱演を見ながら、こういうのも悪くはないと、優しい気持ちにさせられたのも事実だ。

 これは作り手の誠実さとともに高く評価されてもいい。無邪気な子供たちの力強い芝居がこの作品を救った。これは確かに単純なメッセージでしかないが、このメンバーを束ねて2ヴァージョンを作り上げたという事実を目にした時、そのメッセージを信じざるえなくなる。不可能にみえるものを可能にする力がここにはある。そうして愛と希望と再生のドラマとして『ロミオとジュリエット』は21世紀に復活した。

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