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映画・演劇のレビュー

真紅組『うそけの橋』

2011-10-25 22:07:34 | 演劇
 新町遊郭を舞台にして、時代の移り変わりの中で新しい一歩を踏み出そうとする人々を描く群像劇。こういうパターンのお話が真紅組は大好きだ。最近はいつ見てもこの同じパターンなので、正直言うと少し食傷気味ではあるが、それでも上手いから安心して楽しめる。華やかで楽しい2時間をきちんと見せてくれる。

 ただ今回の阿部遼子さんの台本には全く驚きがない。ここまでルーティーンワークにならなくてもいいのではないか。まるで大衆演劇を見ている気分だ。おきまりのパターンから一歩も出ずにお約束を楽しむというのも芝居のひとつのありかたなのかもしれないが、出来ることならこの題材でしか描けないテーマを突き詰めてもらいたい。

 せめてここが新町遊郭である、という必然性が欲しい。明治5年大阪という時代設定、背景もこれでは中途半端だ。新町遊郭がどんなところで、そこがあの時代どんな状態だったのか。奴隷娼妓解放令によりどんな問題が生じたのか。そんなドラマの基本となることはきちんと抑えたうえでこの作品のテーマを展開していって欲しい。

 時代の変わり目でどう生きればいいのか、をとまどう女たちを通して描く。帰るところがない女たちがここに居残り、居座り、ここで生きていこうとする。やがては失われていく運命にあり、それが世の中にとってはいいことなのだ、と思うが、表面的なレベルで郭をなくしても、セックス産業自体は無くならない。国の都合だけで表面を取り繕い、そのために居場所を失う人々もいる。彼女たちがここで本当の第一歩を踏み出すことの意義にまで迫って見せてもらいたかった。


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