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映画・演劇のレビュー

プロトテアトル『レディカンヴァセイション(リライト)』

2022-06-12 11:13:42 | 演劇

2019年に芸術創造館で上演された作品の再演。FOペレイラ宏一朗の代表作。突然の大地震によって山奥にあるビルの中に閉じ込められて生き埋め状態になった人々の姿が描かれる。今回、満を持してリライトした完全版で上演される。

初演を見た時も面白いと思ったが、今回改めて見て、この作品の描く世界がさらに明確になり、完成度も高まっていたのがうれしい。ひとりひとりのキャラクターが明確で、でも、パターン化はされてはいない。無理なく個性的で魅力的。彼らがそれぞれ今ひとりになり、この場にいて、暗闇のなか孤独と恐怖に耐えながら声だけを頼りにして助けを待つ姿が描かれる。だけど、ここに助けが来るとは思えないし、このままここで死んでしまうのではないか、と不安になる。でも、そんな不安をなんとか押しとどめて、いや、気づかないふりしてやり過ごす。いや、なんとかしてここからの脱出を試みる姿が描かれる。

たったふたりだけの警備員。彼らの会話から始まる。次に、ここの探検にきた大学生たち。サークル活動の一環で廃墟探検にやってきた。さらには自殺するためのグループ。彼らはここで集団自殺をするために来た。ネットで知り合ってお互い面識はなかった。この3グループの話が交互に描かれ、やがて、交錯する。バラバラで本来出会うはずもない11人がここにいる。そんな彼らの姿を丁寧に描きわけながら、彼らがここで交差し、出口を求める姿が描かれる。

終盤の実際暗闇にした部分もいい。そこまでがきちんと描かれたから、この闇のシーンが生きる。彼らが体験していたものを観客である我々にも突きつけるのだが、これはそれまでのドラマがきちんと描き切れてなかったなら、つまらない小細工にしかならない。エンディングまで封印したから際立つし、想像ではなく、実際の闇を体感したとき、それまでの彼らの恐怖が改めてリアルに迫ってくる。

出口は提示されない。この先は見えないまま終わる。お話の結末を宙ぶらりんにすることで、描くものは救出劇でも脱出劇でもなく、この状況にあることが明確になる。アイホールの広い空間を上手く使い、11人が右往左往する姿をシンプルな空間の中で作り上げる。

 


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