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映画・演劇のレビュー

『影裏』

2020-02-23 17:26:47 | 映画

なんでこんなしんどい映画ばかりを見ているのだろうか。なんだか自分で自分を追い詰めているみたいで嫌になる。もっとノーテンキで何も考えなくていい映画にすればいいのに、ついつい暗い映画ばかりを選んでしまう。これは救いようがない映画だ。しかも、大友啓史監督はそこに一切逃げ場を用意しない。彼らを静かに追い詰めていく。

綾野剛演じる主人公と松田龍平演じる友人とのやりとりが描かれる。彼らふたりのあやうい関係はなんとかバランスを取りながら続く。それを見守りながら、絶対にとんでもないことが起こると思う。だいたいこれは冒頭から東日本大震災直後の描写から始まる映画なのだ。だからといってこれはあの災害を直接描くのではない。背景として描かれる。だが、そこにある恐怖と危機感が全編を貫く。

ふたりの過去が暴かれるのではない。もちろん見える部分は見える。だけど、それでわかった、なんてことには当然ならない。人間はそんな単純なものではない。映画はとんでもない緊張感を持続させる。見ているだけでクタクタになる。それは彼らの抱える闇である。それを知りたいと思うのではない。どちらかというと避けたいくらいだ。だけど、気になる。こいつは何者なのか。どうして自分と関わろうとするのか、と。それが嫌なのではない。自分に通じるものをそこに見るから、気になるのだ。だけど、それを見るのは怖い。同性愛を扱うけど、それが目的ではない。

誰もが抱える闇と向き合うことがこの映画のテーマだということはわかる。では、その闇って何なのか。それが明確にはされないので、見終えても、もやもやしたものしか残らない。すっきりできる映画ではないことなんか冒頭からわかっていたけど、2時間14分のそれなりの長尺を見終えて、こんなにも茫洋とした気持ちにさせられたまま、放り出されるなんて、少しきつい。


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