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なんとも不思議なお話だ。しかし、それをもっとスタイリッシュに見せてくれたならいいのだが、少し、拙くてぎこちないから、乗り切れない。惜しいなぁ、と思う。
同棲している彼女がいるのに、バイト先の先輩の誘いに乗って夜中に出ていく。「やっかいな、先輩なんだ、」とか言い訳しながら、先輩のいるファミレスに行く。もちろん、彼女には先輩が女であることなんか言わない。別に彼がやり手の女たらしである、というわけではない。この芝居はさりげなく、ある種の特異な設定を用意して、そこから更にシュールな空間へといざない、僕たちを置き去りにする。
先輩とふたりで海を見に行く約束をする。ウキウキするほどではない。先輩には彼氏がいるし、自分にも、彼女がいる。浮気ではない。だが、期待しないわけでもない。先輩は遠くの海に行こうとする。自殺の名所の崖に行く。明日の朝一緒に死んで、と言われる。ありえないのだが、お茶を濁す。下心を見透かされる。あわよくば、と思っていた。だが、先輩は絶対に私に手を触れないで、と釘をさす。
こういうストーリーが重要なのではないけど、このストーリーを通して、人間の深層に迫るような作品を作ることは十分可能だ。いくらでも深読みはできるような構造になっている。しかし、この芝居はそうはさせない。コメディとして分類できるくらいの緩さで展開していく。周辺を彩る人々の描写もそうだ。そこで笑わせることも可能なくらいの淡さだ。だが、ベタで笑わせるわけではない。そういう中途半端さは悪くはないのだが、それが明らかに作品の弱さを露呈する。シュールなイメージの連鎖、記号としての「ベッド」「海」「電車」そして「崖」。それらが彼を不安と心地よさの微妙なバランスを保つ夢のような世界へといざなう。とてもおもしろいし、可能性を感じさせる舞台なのだ。
しかし、進むべき方向を明確にしないまま、芝居は終わる。なんだか肩すかしを食らった気分になる。そこが作者である合田団地さんの狙いなのかもしれないけど、あと一押しが欲しい。ここには怖さがない。夢のような心地よさと背中合わせの怖さがあれば、これはちょっとした傑作になるかもしれない。
同棲している彼女がいるのに、バイト先の先輩の誘いに乗って夜中に出ていく。「やっかいな、先輩なんだ、」とか言い訳しながら、先輩のいるファミレスに行く。もちろん、彼女には先輩が女であることなんか言わない。別に彼がやり手の女たらしである、というわけではない。この芝居はさりげなく、ある種の特異な設定を用意して、そこから更にシュールな空間へといざない、僕たちを置き去りにする。
先輩とふたりで海を見に行く約束をする。ウキウキするほどではない。先輩には彼氏がいるし、自分にも、彼女がいる。浮気ではない。だが、期待しないわけでもない。先輩は遠くの海に行こうとする。自殺の名所の崖に行く。明日の朝一緒に死んで、と言われる。ありえないのだが、お茶を濁す。下心を見透かされる。あわよくば、と思っていた。だが、先輩は絶対に私に手を触れないで、と釘をさす。
こういうストーリーが重要なのではないけど、このストーリーを通して、人間の深層に迫るような作品を作ることは十分可能だ。いくらでも深読みはできるような構造になっている。しかし、この芝居はそうはさせない。コメディとして分類できるくらいの緩さで展開していく。周辺を彩る人々の描写もそうだ。そこで笑わせることも可能なくらいの淡さだ。だが、ベタで笑わせるわけではない。そういう中途半端さは悪くはないのだが、それが明らかに作品の弱さを露呈する。シュールなイメージの連鎖、記号としての「ベッド」「海」「電車」そして「崖」。それらが彼を不安と心地よさの微妙なバランスを保つ夢のような世界へといざなう。とてもおもしろいし、可能性を感じさせる舞台なのだ。
しかし、進むべき方向を明確にしないまま、芝居は終わる。なんだか肩すかしを食らった気分になる。そこが作者である合田団地さんの狙いなのかもしれないけど、あと一押しが欲しい。ここには怖さがない。夢のような心地よさと背中合わせの怖さがあれば、これはちょっとした傑作になるかもしれない。