習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

綿矢りさ『夢を与える』

2007-05-07 23:02:28 | その他
 読んでいて気分が悪くなる小説だった。こういう頭の悪い女の子を主人公にして、その子が被害者ズラしているような小説にはついていけない。頭の悪いバカ女をきちんと客観的に捉えて見せてくれても、たいがいつまらんが、この小説は彼女の立場に立って弁護しているところが、なんだかなぁ、と思う。彼女の恋人となる男の子がまた酷い。こんな子に入れ込んで破滅する少女になんて共感できるはずがないではないか。

 彼女の母親に対してはバカ女としてしっかり筋を通してくれているから、その部分はまだ読んでいられるが、ヒロインのほうはこれではつらい。恋を知って自分の意思で生きようとするアイドルタレントの話なんて三文小説のネタにすらならない。綿矢りさはどうしてこういうお話を長編の題材として取り上げたのだろうか。

 18歳にして老いてしまった少女。そんな知ったかぶりするような子供のどこに共感したのか、よくわからない。子供の暴走として、これを描いているわけではあるまい。自分を偽って12年間生き続けた少女が始めて自分の意思で人生を選択しようとしたとき、すべてが崩れ去ってしまう。何が壊れたというのだろうか。よくわからない。

 こういう知ったかぶりは鼻に付く。たかがアイドルとして芸能界でチヤホヤされて、何を知ったつもりになるのかなぁ。これは同じように10代で芥川賞を取ってチヤホヤされ、スポイルされてしまった自分に対するレクイエムなのか?(ごめん。これはちょっと言いすぎです)

 夢を与える、という傲慢さの中に作者は何を見たのか。そこが実はこの作品の一番の眼目であろうが、うまく伝わりきれてない。終わらせ方も下手だ。これではまだこの小説は終われていない。

 発想があまりに幼稚に思えて、ついていけないのだ。読売新聞の書評担当の小泉今日子さんに、この小説について書いて欲しい、と思う。彼女なら、どんな感想を言ってくれるのだろうか。ぜひ意見が聞きたいものだ。

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