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映画・演劇のレビュー

あさのあつこ『ハリネズミは月を見上げる』

2020-12-26 10:37:47 | その他

ふたりの女子高生のお話なのだけど、よくある「友情もの」の枠には収まらない広がりがある。彼女たちが立ち向かうのは周囲のクラスメートたちではない。先生や大人たち、そして、この社会、この世の中と向き合う。彼女たちは怯まない。でも、立ちはだかる壁は大きいし、強固だ。でも、ちゃんと自分の力で、自分の考えを持ち、立ち向かう。

 

痴漢に遭ったところから始まり、まず、目の前の痴漢と戦い、教師と戦い、周囲の目と向き合い、最後には、姉を追い詰めた上司や会社と戦う。そんなふうに書くとなんだか、社会派ドラマのようだけど、もちろん、そんなのではない。ふたりの少女たちの目の前にある現実と向き合うお話がやがてはそんなところへと行き着くことになるのだ。

 

もちろん、簡単には答えは出ない。単純なハッピーエンドが用意されているわけではない。だけど、彼女たちをみつめているだけで、勇気がわいてくる。理不尽な現実と向き合い戦う姿は実に爽やかで、気持ちがいい。納得がいかないことには首肯しない。断固として戦う。引っ込み思案な女の子が、強い意志を持つ女の子と出会い、彼女に惹かれていく。だが、やがて気がつくと2人の関係は逆転していく。お互いがお互いを引っ張り合う。そして、相互に影響を与えあいながら、成長していく。あさのあつこらしい作品だ。

 


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