89年作品。87年から3年間。ある夫婦とその娘のとある1日を描く。3部構成で、3日が、同じように描かれていく。氷河期3部作の第1章であると同時にミヒャエル・ハネケのデビュー作でもある。この1作で彼は自分のスタイルを確立している。これは彼の代表作といってもあながち間違いではない。まさに完璧な映画だ。
いつもと同じように理由は描かれない。幸福に見える家族の1日が描かれていく。朝6時、起床。夫は仕事に行き、娘は学校へ行く。自分は家事をこなし、買い物に行く。なんでもない1日のスケッチ。夫の両親へ宛てた手紙がナレーションで綴られる。夜の食事の時、彼女の弟は泣き崩れる。それを慰める。そんなふうにして30分程で彼らの1日が幕を閉じる。88年のある日は朝から雨模様だ。同じように朝6時、起床。夜には夫の上司を食事に招く。夫の仕事は順調だ。しかし、彼らは幸福そうではない。
そして、89年のある日。彼らは決心した。この世界から消えてなくなることを。オーストラリアに移住するために、全てを処分する、というが本当は、この世界に彼らの痕跡を一切残さず、死んでいこうとする。そのために周到な準備をして、この最期の1日を過ごす。
彼らの絶望とは何だったのか。言葉では何ひとつ語られない。ただ、冷徹に事実だけを見せていく。この世界は絶望に満たされている。これ以上ここに留まることは出来ない。
この映画はとてもシンプルだ。『71フラグメンツ』や『コード・アンノウン』を見た後で、これを見ると同じ監督とは思えないくらいだ。しかし、描くべきものは一貫している。見事なまでに同じことだ。全く揺るぎない。今回ハネケの旧作を遡り傑作『隠された記憶』への道程を追体験できたことは貴重な経験となった。これからはリアルタイムで今後の彼の軌跡を追える。いったいどんなところへと我々を連れて行ってくれるのか、興味は尽きない。
いつもと同じように理由は描かれない。幸福に見える家族の1日が描かれていく。朝6時、起床。夫は仕事に行き、娘は学校へ行く。自分は家事をこなし、買い物に行く。なんでもない1日のスケッチ。夫の両親へ宛てた手紙がナレーションで綴られる。夜の食事の時、彼女の弟は泣き崩れる。それを慰める。そんなふうにして30分程で彼らの1日が幕を閉じる。88年のある日は朝から雨模様だ。同じように朝6時、起床。夜には夫の上司を食事に招く。夫の仕事は順調だ。しかし、彼らは幸福そうではない。
そして、89年のある日。彼らは決心した。この世界から消えてなくなることを。オーストラリアに移住するために、全てを処分する、というが本当は、この世界に彼らの痕跡を一切残さず、死んでいこうとする。そのために周到な準備をして、この最期の1日を過ごす。
彼らの絶望とは何だったのか。言葉では何ひとつ語られない。ただ、冷徹に事実だけを見せていく。この世界は絶望に満たされている。これ以上ここに留まることは出来ない。
この映画はとてもシンプルだ。『71フラグメンツ』や『コード・アンノウン』を見た後で、これを見ると同じ監督とは思えないくらいだ。しかし、描くべきものは一貫している。見事なまでに同じことだ。全く揺るぎない。今回ハネケの旧作を遡り傑作『隠された記憶』への道程を追体験できたことは貴重な経験となった。これからはリアルタイムで今後の彼の軌跡を追える。いったいどんなところへと我々を連れて行ってくれるのか、興味は尽きない。