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映画・演劇のレビュー

『ラッシュアワー3』

2007-09-18 17:51:51 | 映画
 今回は、大好きだったジャッキーではなく、だだひたすら真田広之を見るためだけに劇場に赴いた。それと閉館する三番街シネマにお別れを言うためでもある。

 32年間一体どれくらいこの劇場に足を運んだことであろうか。シネマ2が名画座だった頃なんて確実に月2回くらいは通っていた。シネマ1は特に、スクリーンも大きいし、見やすいから好きだった。ナビオが出来てからは、拡大公開作品は必ずここで見た。だって、空いてたし。

 真田広之の話だ。彼が本格的に主役デビューしたのは、鈴木則文監督の『百地三太夫』である。その翌年『吼えろ鉄拳』でアイドル映画とカンフーものをミックスさせたような作品に挑戦する。(この時、松田聖子の、というより澤井信一郎監督のデビュー作『野菊の墓』と同時公開された。)1981年夏のお話だ。真田はアクションスターとして売り出した。ブルース・リー亡き後様々なカンフー映画が作られた。そんな中、日本でも数々のカンフーものが真田の師匠である千葉真一によって作られた。だが、それらはただの香港映画のコピーでしかない。

 やがて、真田広之に転機が訪れる。彼がアクション映画をやめるきっかけになったのは同じようにアクション映画でならした深作欣二監督『道頓堀川』だ。深作自身もこの頃自分の作風を変えて行かざる得ない過渡期にあった。そんな中、真田はこのアクションが全くない映画の主役をすることで、新境地を開き、その後の『麻雀放浪記』へと繋がっていく。もちろんこんな話がしたいのではない。

 40代半ばに達した彼が、今更こんな単純アクション映画に挑むことはナンセンスである。彼のキャリアにおいてもあまり意味はない。なのに、彼はこのオファーを断らない。その理由は一つしかない。あのジャッキー・チェンと共演すること。それだけである。

 彼の出演シーンは、すべてジャッキーとの絡みしかないのもいい。アクションスターとしてキャリアをスタートさせた彼にとってジャッキーは憧れの存在だったはずだ。そんな彼と20年以上の歳月を経て、しかも、日本映画でも香港映画でもなく、ハリウッド映画で共演することは感慨深いものがあるに違いない。だから、封印してきたアクションを敢えて見せる意味は十二分にある。

 この映画においてクリス・タッカーは脇役でしかない。今回に限ってはあくまでもこれはジャッキーと真田のバディー映画なのだ。だいたいジャッキーにとってもこのシリーズはあまり意味のある作品ではない。だが、ハリウッドスターとなったジャッキーが彼を中心とするバディームービーを持ち、そのシリーズがヒット続けるということに意味があるのだろう。

 これが映画としてはつまらないのは、このシリーズの前2作を見てるから分かっている。だけど余裕でアクションをこなすジャッキーを見てるのは嫌ではないし、ラストの真田とのエッフェル塔での対決シーンにも迫力があったので良かったと思う。

 工藤夕貴が前作のチャン・ツィイーのポジションで、アクションがかなりあり、頑張っていたし、マックス・フォン・シドーとか、イヴァン・アタルとかキャストも豪華で、それはシネスコ画面に似合う華やかさで、三番街シネマの幕引きにふさわしい作品だった。

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