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映画・演劇のレビュー

『海賊とよばれた男』

2016-12-18 02:13:56 | 映画
大ヒット作『永遠のゼロ』に続いて、原作百田尚樹、監督山崎貴、主演岡田准一で放つ第2弾。前作以上に困難な挑戦に挑む。この長大な原作を2時間半の映画にしてまとめ上げることは至難の業だ。どうしてもダイジェストになる。どこかをポイントにして作るわけにはいかない題材だから、お話はすべてをフォローするしかない。そうするとやはりダイジェストにならざる得ない。



主人公の戦後から話を起こした。まだ若い岡田准一は60代を中心にして演じることになる。それは無謀だ。だいたいこの小説は主人公の若い日を描く部分が圧倒的に面白い。無茶を押し通す彼を周囲が海賊と呼ぶ。まぁ、このお話に限らず、大河ドラマは主人公の若い日を描く部分が面白く、それがあるから、大人になってからや、年を取ってからの部分も興味深いのだ。これは映画向けの題材ではなく、連続ドラマとして初めて機能する。そんなこと、山崎監督も重々承知している。それでもスケールの大きな映画として、この作品を作ろうとした。そこに日本人の魂のルーツをたどろうとした。これは押し寄せる近代化の波に飲まれることなく、自分を貫こうとした男たちのドラマだ。



だからこれは本来なら群像劇にしたほうがいい。だが、そうするとますます上映時間が長くなる。5時間くらいの映画にでもしなくてはこの意図は達成されない。そんなこと最初から不可能だとわかっている。尺は決まっていたはずだ。そこから逆算して台本を書かざる得ない。だから、絞り込んだ。とことん絞って主人公はひとりにした。彼の視点からすべてを描く。たとえ、彼がそこにはいないとしても、である。自分の判断でみんなに動いてもらう。自分を信じてもらうしかない。その結果、負けることもある。だが、その責任はすべて自分が引き受ける。



戦後の焼け跡から立ち直る。そこが映画のスタート地点だ。その時敵となるのはアメリカ人ではなく、日本人で、すべてを敵に回しても、自分の意思は曲げない。ナショナリズムすれすれのドラマになるのは、前作と同じで、そこが叩かれる可能性は大だ。だが、そんなことに気を取られては最初からこの企画はない。引き受けた以上、そんなこと気にするわけにはいかない。自分の信念を曲げない。ただ、それだけ。



誤解は恐れないで、戦う。自信なんかない。だが、やらなくてはならない、という思いだけが彼を導く。何が正しくて何が間違いだかはわからないけど、自分を信じて戦う。これはそんな男のドラマだ。映画としては成功したとは言えないけど、この映画の目指したものには間違いはない。
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