なんとこれはあの『となり町戦争』の続編なのだ。でも、あの話のその後ではない。あの設定の第2段階。というか、別バージョン。だんだん気付くというくらいに、そこはかとない。10年の歳月を経て、あの衝撃のデビュー作の世界観を今一度見せる。だが、描かれる問題への作者の手触りはよりリアルで切実なものになっている。現実の不気味さに小説は追い越されている。でも、焦るのではない。
この姿の見えない戦争は、ひそかにどこかで今もある。だが、誰もそのことに気付かない。三崎亜記は他の小説でもいつも同じようにこういう不条理を描いてきた。正直言うとすべての小説が『となり町戦争』の別バージョンなのだ。だから、ことさら今回が続編であると声高に叫ぶことはない。というか、そんなこと言ってない。僕が勝手に言ってるだけ。だが、今、敢えて「戦争」という彼が提示したイメージをもう一度ここに持ち出す。それくらいに今ある僕らを巡る現実は恐ろしい。
地方都市の日常。お役所仕事としての戦争が描かれた前作と同じ感触。今回は、市と町の統合を巡る不穏な空気。ここには、戦争はまだない。だが、これはある種の戦争だ。戦争にすらならないくらいの、でも、確かな戦争なのである。雑誌掲載時の『統合前夜』という原題を改め、このなんだかとてもゆるいタイトルへの変更は、韜晦作業の一環だ。この小説の中身そのままである。「お散歩」なんていうタイトルは本当なら似合わない。だが、そこに隠されたものこそが、この小説のねらいだ。
同時収録の短編『戦争研修』こそが、本当なら『となり町戦争』の続編なのだが(というか、スピンオフ)、表題作と2つ並べて、隠れた続編というスタイルを演出している。これは、そんなふうに、とても憎たらしいくらいに凝った作品なのだ。
この姿の見えない戦争は、ひそかにどこかで今もある。だが、誰もそのことに気付かない。三崎亜記は他の小説でもいつも同じようにこういう不条理を描いてきた。正直言うとすべての小説が『となり町戦争』の別バージョンなのだ。だから、ことさら今回が続編であると声高に叫ぶことはない。というか、そんなこと言ってない。僕が勝手に言ってるだけ。だが、今、敢えて「戦争」という彼が提示したイメージをもう一度ここに持ち出す。それくらいに今ある僕らを巡る現実は恐ろしい。
地方都市の日常。お役所仕事としての戦争が描かれた前作と同じ感触。今回は、市と町の統合を巡る不穏な空気。ここには、戦争はまだない。だが、これはある種の戦争だ。戦争にすらならないくらいの、でも、確かな戦争なのである。雑誌掲載時の『統合前夜』という原題を改め、このなんだかとてもゆるいタイトルへの変更は、韜晦作業の一環だ。この小説の中身そのままである。「お散歩」なんていうタイトルは本当なら似合わない。だが、そこに隠されたものこそが、この小説のねらいだ。
同時収録の短編『戦争研修』こそが、本当なら『となり町戦争』の続編なのだが(というか、スピンオフ)、表題作と2つ並べて、隠れた続編というスタイルを演出している。これは、そんなふうに、とても憎たらしいくらいに凝った作品なのだ。