こんな変な映画を見るのは久々のことだ。めったに日本では公開のないル-マニア映画。終わった瞬間、これで終わりなのかと本気で腹が立った。なんじゃこれは!と怒りの鉄拳。ヒューマンコメディのはずなのに、まるで笑えないし、暖かい気分にもさせてくれない。このテンションの低さは大概だ。89分しかない映画なのに、いつまでたっても、クスリとも笑えない。だんだん凍り付く勢いだ。終盤はただただ穴を掘っているばかりだし、ストーリーの面白さは皆無。宝探しのお話だから、心地よい大人のメルヘンだろう、と勝手に楽しみにしていたのに、まるでそうじゃない。
子供にロビンフッドの話を読むシーンをしつこく見せるのも、イライラする。隣の住人がお金を借りに来るのも、大概だろ、と思う。(実はここからお話が始まるのだけど。)
見終えて時には、「つまらない」と思ったけど、このつまらなさは普通じゃないことに気付く。こんなのありか、という驚きがここにはある。ありとあらゆるシーンがそれはないわぁ、の連続で、それが何も考えてないようで、でも確信犯だけど、その意図は不明。故意につまらなく作れるって何? きっとこの監督は宝探しというドキドキするものを、こんなにもつまらないモノとして、それを夢のないものに描くことで、異形のものにする。
ラストで手に入れたお金を、子供が喜ぶような宝物(宝石とか目に鮮やかな装飾品)に変えてみんな(子供のおもちゃとして)にばらまく。見つけた債券を息子に見せたとき、こんなのが宝物なの、とがっかりされたからだ。800ユーロがなくて、生活にも困窮していたはずなのに。高価なものを公園で遊ぶ子供たちに、ただで与えるのだ。あのラストシーンには唖然とした。
400ユーロに値切って金属探査機業者を手配して、穴掘りをする。業者が夜になって帰る時も、引き留めない。黙々と穴を掘る。ほんとうにお宝が出てくるのか、不安になるとかいうリアクションはない。宝物を手にしても、別段感動はない。
本当に、彼は夢を手に入れたのか? お金を手にした時、大金持ちになってハッピー、ではなく、お金なんか要らないよ、というスタンスを提示する。それって何なのか。いろんなことがわからないままあっけなく終わる。呆れた衝撃作だったな、と今更ながら思う。