夏の『ザ・マミー』に続くトム・クルーズの新作。前作は彼の映画とは思えないほど、つまらない出来だったが今回は大丈夫だ。ダグ・リーマンなので安心して見ていられる。ドキュメンタリータッチがストレートな娯楽映画の中で、ちゃんと生かされたならどうなるのか、ということへのチャレンジなのだが、あの細かいカット割りには、いささかイライラさせられる。しかも、娯楽映画のはずなのに、楽しくテンポよく痛快には見せてくれない。内容が内容なので、社会派になるのは仕方ないけど、それにしても。と、書いているけど、実は面白い。このハチャメチャがやがて、どうなるのか、先が気になる。
トム・クルーズは飛行機乗り回して楽しそうだ。こんな危険なことをしてるのに、しかも何度となく死にそうになるのに、実にタフ。スーパーヒーローではなく普通のパイロットの役だけど、いつもの笑顔と凄い度胸とノーテンキで乗り切る。むちゃくちゃしよる。と、こう書けばなんだか、楽し気な映画に見えるのだけど、先にも書いたように、実はそうではない。
70年代から80年代にかけての時代背景も影響している。決して幸福な時代ではない。さらには麻薬の密輸で大儲けする男というピカレスクなのも影響した。呆れた話だが、実話だし、悲惨だし、素直には楽しめない。お金を紙くずのように扱うのも、見ていてちょっとしんどい。確かにお金ってたくさんあればきっと重いし、いろんな意味でも面倒ばかり。(たぶん)
実はなんだかよくわからない映画なのだ。お話がどうとか、そういうのではない。複雑な事情とか、そんなことでもない。どういうスタンスでこの映画を見たらいいのか、よくわからない、ということなのだ。2時間見終えて、なんとも微妙な気分にさせられる。