先に上演された関大一高と同じく、ヒーローを扱った作品。よく似た話なのに、全く印象は異なるのだが、どちらもとてもおもしろい。鶴商の作品のよさは、物事を単純には捉えない、という姿勢を貫いているところにある。イジメとかヒーローを扱うと紋切り型の展開になる場合が多いのだが、そうはしない。
最初はパターンで、単純そうに見せるのだが、そこに騙されてはならない。5人組のフレンズレンジャー(最初は4人で、名前もあとで付けたのだが)の決めポーズとか、けっこうおバカで、軽いタッチの芝居だと思わせといて、実はそうではない。
これはノーランの『バットマン』シリーズ(もちろん『ダーク・ナイト』だ)のように、ちょっと重くて、暗いタッチで描かれる「ヒーローもの」なのだ。主人公の苦悩だとかが描かれ、『スターウォーズ』のようにダークサイドに落ちたり、なんだか大変なのである。加害者と被害者、悪と善が単純に分離してない。もしかしたら、被害者と加害者は同じなのかもしれない。ほんのちょっと立場や状況が変わるだけでそれは簡単に反転する。ヒーローがヒールになり、その反対もあり得る。この芝居が描く虐めの構造もそうである。
虐められていた少年が、ヒーローたちに助けられ、メンバーに入り、自分もヒーローの仲間入りをする。しかし、やがてリーダーである剛の中にある暗い部分がどんどん膨れてくることから彼らの関係が破綻する。作、演出、主演の剛役とワンマンで作品を牽引した川野楓が素晴らしい。