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まだ弱冠20歳の健康が挑むコロナ禍を生きた女の子たちの物語。パプリカどろぼう(泥棒ではなく)は我々からいろんなものを盗んでいく。パプリカどろぼうにはコロナが重ねられているのは明らかである。だけどパプリカどろぼうというかわいいネーミングがいい。彼は僕たちからなんでも奪っていくけど、物がありすぎるドンキでは何も盗まないで去ってしまったというお茶目なところがあり。憎めないなんていうバカバカしい設定は可愛い。
これは今年のウイングカップ2作品目となる作品だ。若い作り手がコロナ禍を生きた自分たちの気持ちをそこに込めて作る誠実な作品で好感度は高い。
主人公の彼女らは(作、演出の健康たちも)17.8歳の大事な時代をコロナに奪われた。今20歳を迎えて思うことが描かれる。高校の同級生4人は京都に1泊旅行でやって来た。これはコロナで出来なかった修学旅行のリベンジだ。ここから芝居は始まる。
芝居では「コロナ」ではなく「パプリカどろぼう」となっていることでリアルからファンタジーへと自然に移行出来た。偶然再会する中学時代の恩師(今は教師をやめて世界中を旅しているらしい)が彼女に希望を与えるという展開も悪くない。無職で浮浪者みたいに2年間放浪の旅を続ける彼女もまたコロナの被害者なのだろう。彼女が仕事を辞めて旅する意味は描かれないが、そこにある「何か」はちゃんと伝わってくる。65分という短い芝居ではなく、90分くらいの長さにしたなら、さまざまな背景も取り込めたのではないかと惜しまれる。