『Gメン』と言われると、もちろん「75」と続く。丹波哲郎だ。だがこれは昭和のGメンのリメイクではなく令和のGメンである。20世紀のGメンでもなく、21世紀のGメンで『クローズ』みたいな学園ものでアクション青春映画。「学園のてっぺんを取っちゃる!」とかいう感じか、と最初は思って見ていたが、喧嘩だらけの映画だけどそうじゃない。もちろん例によってこれも漫画の映画化。シリアスではなく、バカバカしいバカコメディ・アクション。
あのとんでもない映画『バイオレンスアクション』(あんなに頑張っていた橋本環奈がとても可哀想だった無残な映画)の瑠東東一郎が監督だから全く期待してなかったし、最初は見る気もなかったけど、担任教師役で出ている吉岡里帆の姿を予告編を見て、こんな映画にけなげに出ている彼女が見たくて行くことにした。というか、ガラの悪いヤンキー生徒たちに向かって威勢のいい啖呵をきっている姿がカッコよくて、なんだか凄いし心地よかったので興味を持ったのだ。そしてその判断は正解だった。
まるで期待せずに見たのに、これである。それだけにショックは大きい。もちろんそれはうれしい誤算だ。テンポがよくて軽やかで面白い。最初の30分、快調である。最後までこれが続いて欲しいと思わせた。ただ上映時間は2時間もある。息切れは必至だ。せっかくの映画がきっとどこかで減速する、そんな心配が過ぎる。面白いのに不安。それに対して秘策はあるのか、とか、見ていていろいろ気になってきた。
田中圭と高良健吾が隠し玉だ。ふたりはまさかの高二と高三で、G組の先輩を演じる。昔、竹内力が『岸和田少年愚連隊』シリーズで中坊のカオルちゃんを演じたことがあったが、ふたりの存在はあれに負けないインパクトがある。しかもしゃしゃり出ない。さらには終盤登場のラスボスの尾上松也も敢えてショボい感じがいい。
ということで、この映画を見て驚いた。これがまぁ、なんと最後までテンションをキープするのである。これは予想もしないまさかの映画で、とてもよく出来ているのだ。主役の岸優太を中心にして、もちろん彼だけではなく吉岡里帆を含めた役者たちがみんな弾けまくっている。ノリノリで派手なアクションも満載。しかもそれがこれ見よがしではなくさりげなく全編を彩るのだ。瑠東監督が初めて本領発揮した作品になっている。これはバカをとことん徹底した傑作映画である。
加藤正人と「劇団鹿殺し」の丸尾丸一郎が脚本を担当というのにも心惹かれた。鹿殺しは大阪で旗揚げした頃から見ていた。丸尾さんとも話したことがある。彼がこの映画脚本を手掛けるなんて驚き。相変わらず細部まで手を抜かずめちゃくちゃしていて楽しい。いい映画を見た。今年一番のまさかの拾い物。(褒め過ぎですが)
モテる男(そんな学校って!)の高校に転校した高1男子が転入したクラスはG組。エリート高校にありながら落ちこぼれ生徒たちだけを集めたクラス。そんなヤンキー集団内で爽やか男子の彼は周囲を巻き込んでモテるために奮闘する。まぁ、こんなストーリーはこの際どうでもいい。明るく楽しくバカバカしい。