習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

劇鱗『国防クライシス』

2007-07-28 21:21:57 | 演劇
 2時間10分に及ぶ大作である。第5次世界大戦下、日本は相も変わらずアメリカの庇護下にあり、参戦はしないが、運命共同体として、サポートしていく方針らしい。

 このあまりに単純な話に唖然とさせられる。戦争と言うものがスポーツ感覚になり、トーナメント方式で行われ、ファースト・ステージは相撲、決勝は綱引きで勝敗を決める、なんていうのもなんだかなぁ、と思う。

 この戦争で勝ったアメリカの統治下に、世界の主要国が入ることになり、世界の平和が保たれる、とか。それって何?いったい何のためにこの戦争が為されたのか。よく分からない。日本がアメリカと命運を共にする、というが、それって戦争に負けて統治下に入ることとどう違うのかもよく分からない。

 これではこの芝居に於ける世界の成り立ちがよく分からないのだ。ある種の象徴としての代理戦争なのだろうが、そこに象徴させたものが伝わりきらないから、単なるおふざけにしか見えない。リアリティーを求めるのではないが、せめてもう少し説得力が欲しい。世界をアメリカが統治することによってどういう事態が生じるのか。それに対する各国の反発はないのか。レジスタンスやテロに対してどう取り組むことになるのか。描くべき問題は山盛りあるはずなのだが、何も描かれない。

 8カ国によるバトルを追うだけでは何も見えてこない。日本政府の反逆にしてもあれでは答えになっていない。パンフレットにある「5分でわかる国防クライシスの世界」は確かに分かりやすいが、こういうことは芝居を見ていくうちに分かってくるように描かなくては意味がない。この世界観を通してどういう答えに行き着くのかが作者の腕の見せ所である。

 面白い題材を持ってきて劇鱗らしい味付けで見せようとした心意気は買うが、展開にさせ方の単純さが作品の力になりきらないのが惜しい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『トゥモロー・ワールド』 | トップ | ハレンチキャラメル『白鳥は... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。