このオリベイラの遺作(たぶん)は、こんなにもサラリとしたゴーストもの。死者に魅せられた青年の不思議な体験を淡々と描く。いったい何を見せたいのやら、それすらよくわからない。ホラーというには、怖くないし、だいたい怖がらせるために作ってない。
死んだ女(しかも夫がいる)に心惹かれても、彼の恋心は叶うはずもない。しかし、夜の窓辺に彼女がやってきて、夜間飛行を楽しむ。まぁ、それって、ただ夢を見ているだけのことかもしれない。たぶん、そう。だけど、彼の恋心はとどまることなく、エスカレートしていく。彼女のお墓に行って疑似デートとか、もうありえない。これは『牡丹灯籠』なのか? でも、あくまでもこれって、男の方からの一方的な片想いで、独り相撲だ。女は死んでるし。
呪われるとか、祟られるとか、そういうのではない。結局、ドラマチックな展開はない。何となく終わっていき、えっ? それでいいの、とちょっと驚く。何がしたかったのか、と突っ込みを入れたくなるくらいにさりげない。そんな小話のような映画を長いキャリアの最後に、軽々と作ってしまう巨匠のフットワークの軽さにやられたなぁ、と思うしかない。