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映画・演劇のレビュー

『スープ 生まれ変わりの物語』

2012-07-20 22:39:33 | 映画
 生瀬勝久初主演映画だなんて触れ込みだが、そんなのセールスポイントにはなりません。生まれ変わりをテーマにした映画だが、バランスが著しく悪い。前世の記憶を持ったまま生まれ変わって、成長した娘に会いに行くなんていう話で、感動させるのは無理。

 しかも、生まれ変わってからは、生瀬はもう出てこないというのも、大胆だ。主役なのに、ラスト30分は一切登場しないのである。なんだかなぁ、と思う。もちろん映画は俳優に奉仕するのではなく、俳優が映画に奉仕するべきだ、というのは当然の話なのだが、それにしても、これではあまりにバランスが悪すぎる。死んでしまってからよみがえるまでのあの世での話が全体のかなりの部分を占めているのだが、それってシリアスなのか、コメディーなのか、わからないような居心地の悪さ。そういう意味でもバランス悪い。

 小西真奈美と生瀬勝久の2人の関係もまるで、何を見せたいのかよくわからない。普通なら反発しあいながらも、惹かれあうというのが、パターンなのだが、別にそうではないまま、ずっと2人で旅をする。別になんでもかんでもパターンにする必要はない。それはわかるのだが、ここまで、なんにもないまま2人のドラマを見せるって変な気分だ。生まれ変わった2人が同じ高校に入り、彼は彼女に恋をする。じゃぁ、前世でも、実は惹かれあっていたのか? ここでも、バランスの悪さばかりが目に付く。観客の期待と、つかず離れずで、ちゃんと興味を惹いたまま、うまく引っ張るのが映画ではないか。そのへんがこの映画はまるで分かっていないから、ダメなのだ。誰をターゲットにして、何を伝えたいのかを明確にしなければ、よくわからない映画になる。その典型だ。おもしろければそれだけでいい、という意見もあるだろうが、これでは楽しめないし、おもしろくはならない。元も子もない。


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