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映画・演劇のレビュー

『カメレオン』

2008-07-31 08:11:38 | 映画
 阪本順治監督が『闇の中の子供たち』(公開はこちらの方が後で大阪は8月2日から)の後のリハビリとして撮った最新作は、松田優作の『遊戯シリーズ』の1本として企画された幻の台本(丸山昇一)の映画化。こういう単純アクションを1本撮ることでバランスを取るっていいことだと思う。

 今まで阪本監督は様々なジャンルの映画に挑戦してきたが、この手のB級アクションは初めてではないか?『トカレフ』は基本はアクションだが、今回のように東映セントラルアーツによる企画ではなく、単純アクションではない。たくさんしていそうに見えて、実はあまりやってないという意外さ。そういう意味でもなんだか楽しみだった。

 思いっきり羽を伸ばして古き良き時代のアクション映画の世界を楽しんでいる気がした。もともと第1作の『どついたるねん』の頃から彼はエンタテインメント志向を見せていたから、社会派寄りの評価を受けてきたことの方が本当は心外だったかもしれない。今回主演に迎えた藤原竜也は、優作とは違ってもっとデリケートな鬱屈を見せてくれ悪くない。アクションシーンは生身の肉体がぶつかり合い、きしみ、とても痛そうなのもよい。CG全盛時代となり、アクションがペラペラの、痛みを感じさせないものと化していく中で、こういう昔ながらのアクション映画は貴重だ。

 ストーリーにひねりがなさすぎて、ちょっと退屈することと、藤原竜也に狂気があまり感じられないのは不満だが、見ていて悪くない映画だった。それにしても、あまりに客が少なすぎて、かわいそうだった。

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