アブデラテイス・ケシシュ(こんな難しい名前覚えられない!)の映画を初めて見た。これはなかなか厄介な映画だ。2時間40分もあるのに、こんな中途半端なところで平気で終わらせるなんて、ありえない。なのに、全く動じる気配もない。というか、これが彼のねらいでもある。イライラさせられる。啞然とする。納得する。これって、この主人公のオヤジの性格なのだ。彼に対して思うことが、この映画に対して思うことと、シンクロしている。
まじめで誠実かもしれないけど、なんかツメが甘い。結局人に頼りすぎ。一大決心して自分で「何かをする」(この場合は、船上レストランを開く)のだけれど、結局はみんなの協力があって成り立っただけ。妻や、子供たち、恋人やその娘。総動員である。しかも、うまくいかない。
ラストシークエンス。バイクを盗まれて、盗んだ悪ガキを追い回すのだけれど、そんなことをやっている場合かよ、と思う。そのことも含めて、彼は現実から逃げているだけ。映画はそんな彼を冷徹に突き放す。そんなバカな彼とは対照的に、義理の娘の圧倒的なダンスが延々と続くラストシーンはすごい。彼女の存在感こそが、この映画を支えていたことに気づく。