10×10×10の十時さんが初の長編小説を出版した。5話からなる中篇連作なので、厳密には純粋な長編ではないけど、そんなことはどうでもいい。おもしろければそれが一番で、これはとても面白い作品に仕上がっているのだ。
主人公の佐久間くんは、全編に登場するけど、各エピソードは、それぞれ別の主人公がいる。その主人公の女性の一人称で話は展開する。ものすごいインパクトで唖然とさせられるキャラクターなのに、なぜか昔から存在感が薄く、いつもみんなから忘れられる佐久間くんは、ミュージシャンを目指している。5人の女性たちが、佐久間くんと再会し、彼とのかかわりを通して、成長していく姿が描かれる。みんなかつての佐久間くんの同級生で、いずれも彼の存在なんか完全に忘れている。再会して、いつまでたっても思い出せない。幼児の頃、小学時代、中学、高校、さらにはお弁当屋でバイトしていた頃。5つの時代の5人の同窓生、今では20代から30代に至る女性たちが、このドラマをリードする。そして、そこには佐久間くんの20代の10年間がある。
まったく成長しないように見えて佐久間くんも少しずつ大人になっていくのだ。だが、本題は佐久間くんではなく、これは、そんな彼とかかわりを持つ5人の女性たちの確かな成長の物語なのである。それぞれが弱っているところに、なぜか佐久間くんが現れて、いろいろ問題を起こしてくれて、状況をかき回してくれているように見せながら、最後には、彼に救われていく。これって、山田洋次の寅さんじゃないか、(もちろん『男はつらいよ』シリーズです)と気付く。
読んでいて、とても元気にさせられる。5人のマドンナたち(あえて、そう呼ぼう!)
が、置かれている状況は結構ピンチだ。どこにでもありそうな、でも、その状況にいれば、
とても本人はつらい、そんな切実さがリアルに描かれる。もう人生終わっちゃうよ、という気分にすらなる。でも、人生は続くし、ここで泣いていても仕方ない。なんとかして立ち直るしかない。そんな時、そこにまるでリアルには程遠い冗談みたいな存在である佐久間くんが登場する。毒にも薬にもならないような佐久間くんの存在は大きい。なんだか癒される。
ここには20代の女性たちが抱えるさまざまな問題がさりげなく並んでいる。それを簡単に解決する方法はないけど、あまり深く考えずに読んでいくと、いつのまにか、佐久間くんといっしょに元気になれる。
「夢をかなえた時が、ゴールではなく、そこがスタートラインなのだ」という5話目のことば(だいたいそんな感じ。小説が今手元にないから確認出来ない)がとても胸に痛い。5話のみ他のエピソードとは違って、ここに登場する女性は厳密には同級生ではない。かつてのバイト先の先輩だ。彼女のことが佐久間くんは好きだった。弁当屋でバイトしていたとき、彼女が将来独立して自分の店を出したいと言っていた夢をかなえ、今では「おばんさい」のレストランをやっている。しかし、経営はうまくいかない。そこに、佐久間くんがふらっとやってくる。
今ある苦境を脱して、どう生きていくかのヒントが、ここにはたくさん用意されている。表面的にはライトノベルなのだが、安易なラブコメではなく、とてもよく出来ているし、生きる勇気を与えてくれるすてきな作品である。ハッピーエンドも心地よい。
主人公の佐久間くんは、全編に登場するけど、各エピソードは、それぞれ別の主人公がいる。その主人公の女性の一人称で話は展開する。ものすごいインパクトで唖然とさせられるキャラクターなのに、なぜか昔から存在感が薄く、いつもみんなから忘れられる佐久間くんは、ミュージシャンを目指している。5人の女性たちが、佐久間くんと再会し、彼とのかかわりを通して、成長していく姿が描かれる。みんなかつての佐久間くんの同級生で、いずれも彼の存在なんか完全に忘れている。再会して、いつまでたっても思い出せない。幼児の頃、小学時代、中学、高校、さらにはお弁当屋でバイトしていた頃。5つの時代の5人の同窓生、今では20代から30代に至る女性たちが、このドラマをリードする。そして、そこには佐久間くんの20代の10年間がある。
まったく成長しないように見えて佐久間くんも少しずつ大人になっていくのだ。だが、本題は佐久間くんではなく、これは、そんな彼とかかわりを持つ5人の女性たちの確かな成長の物語なのである。それぞれが弱っているところに、なぜか佐久間くんが現れて、いろいろ問題を起こしてくれて、状況をかき回してくれているように見せながら、最後には、彼に救われていく。これって、山田洋次の寅さんじゃないか、(もちろん『男はつらいよ』シリーズです)と気付く。
読んでいて、とても元気にさせられる。5人のマドンナたち(あえて、そう呼ぼう!)
が、置かれている状況は結構ピンチだ。どこにでもありそうな、でも、その状況にいれば、
とても本人はつらい、そんな切実さがリアルに描かれる。もう人生終わっちゃうよ、という気分にすらなる。でも、人生は続くし、ここで泣いていても仕方ない。なんとかして立ち直るしかない。そんな時、そこにまるでリアルには程遠い冗談みたいな存在である佐久間くんが登場する。毒にも薬にもならないような佐久間くんの存在は大きい。なんだか癒される。
ここには20代の女性たちが抱えるさまざまな問題がさりげなく並んでいる。それを簡単に解決する方法はないけど、あまり深く考えずに読んでいくと、いつのまにか、佐久間くんといっしょに元気になれる。
「夢をかなえた時が、ゴールではなく、そこがスタートラインなのだ」という5話目のことば(だいたいそんな感じ。小説が今手元にないから確認出来ない)がとても胸に痛い。5話のみ他のエピソードとは違って、ここに登場する女性は厳密には同級生ではない。かつてのバイト先の先輩だ。彼女のことが佐久間くんは好きだった。弁当屋でバイトしていたとき、彼女が将来独立して自分の店を出したいと言っていた夢をかなえ、今では「おばんさい」のレストランをやっている。しかし、経営はうまくいかない。そこに、佐久間くんがふらっとやってくる。
今ある苦境を脱して、どう生きていくかのヒントが、ここにはたくさん用意されている。表面的にはライトノベルなのだが、安易なラブコメではなく、とてもよく出来ているし、生きる勇気を与えてくれるすてきな作品である。ハッピーエンドも心地よい。