医療ものではない夏川草介は珍しい。しかもファンタジーである。前作『本を守ろうとする猫の話』の続編で、今回は中2の少女が主人公の児童文学。不思議の世界に自ら迷い込む。大切な本たちを救い出すためである。そんな彼女を守ってくれるのは言葉を話す猫。
13歳,中学2年のナナミは喘息持ちで自由に外出が出来ない。学校と図書館、自宅の日々。ある日、図書館から本を無断で持ち出す怪しい男を見つける。
図書館から本を盗み燃やす将軍。宰相のやり方は中身のない「新しい本」を大量に作り「意味のある本」を誰もが読まないようにすること。そして最後、王は増殖する、と言う。本を守るために彼女は戦う。だけどそれは敵との戦いではない。彼らは本が嫌いだから、本をこの世から無くしてしまいたいのではない。王は問いかける。何千年を生きる彼がたった13年しか生きていない少女になぜ本が必要なのかを問う。
生きていくためには、誰かが必要だ。ひとりでは生きていけない。パートナーは人でもいいけど、本もまたパートナーになり得る。本はあなたを助けてくれる。児童文学とは分類はされていないけど、ぜひ子どもたちにも読んでもらいたい一冊。