5話からなる連作。最初の専業主婦、北川さんが仕事を再開する話がとても面白くて、この先どうなるのか、楽しみになる。だけど、2話からは利用者の話で、しかもフューチャーマートもおしゃべりレジもあまり関係ない。
そうなのだ。これは画期的な「おしゃべりレジ係」の話だったのである。最近のスーパーは経費節減からセルフレジが増えているけど、なんだか味気ないと思うのは自分がオッサンで機械オンチだからか。まだ、今でも有人レジに並んでしまう。しかも現金決済をしてしまう。なんかスマホ支払いは信用できない気がするのだ。
そんな超アナログ人間だから、第1話の主婦の気持ちがよくわかる。子どもの手が離れて、パートでもいいから働こうと思うけど、仕事がない。いや、仕事はあるけど彼女を雇ってくれる会社がない。愕然とするところから話は始まった。
彼女がスーパーのおしゃべりレジ係になるまでの話が第1話。その後はスーパーは脇役に回り、おしゃべりレジ係の彼女はただの脇役になる。
利用者たちのそれぞれの理由はわかるけど、そんな話ならこの画期的な小説で話さなくてもいい。イジメられていた高校生やマッチングアプリで女たちとセックスに耽る男、婚活から不妊治療の話やら、早期退職したおじさんの憂鬱。今風のアルアル事情が描かれる。それが上手く描かれたならいいけど、ありきたりの範疇からでないから、少し退屈。ただ無職になったオヤジの話は見につまされる。僕もハローワークに行き失業手当を申請したことがある。仕事探しもした。もちろん僕に出来そうな仕事は皆無だったけど。
最後に北川さんの話に戻ってくる。引きこもりの息子の話を連れて。ほっとする。