習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『オーストラリア』

2009-02-10 00:37:27 | 映画
 3時間に及ぶ超大作だ。堪能させられる。それにしてもこういうハーレクイン・ロマンが今作られるのはなぜなのか。気になる。『風と共に去りぬ』のような大河ロマンである。現代の映画とはとても思えない。だが、敢えてこれだけのリスクを犯しても今こういう映画を世に問いたいと思ったバズ・ラーマン監督、ニコール・キッドマン+ヒュー・ジャックマン以下この映画に関わった膨大なスタッフ、キャストに敬意を表したい。これを映画らしい映画に飢えていた往年の映画ファンに贈る。時代錯誤ではない。これは誇りを賭けた戦いの映画なのだ。ただのメロドラマだと思われてもいい。正直言うとそんなふうにも見える映画だ。だが、そんなふうに見えても構わない。この映画の作者たちはすべてを覚悟の上でこの巨大プロジェクトを始動させた。

 力強い女の生き方が胸を打つ。男がいて、女がいて、壮大なロマンが生まれる。オーストラリアの大自然を舞台にして、それをすさまじいスケールで描く。この映画は大スクリーンでなくては味わえない。1500頭の牛の暴走シーンの迫力。果てしない大地を旅する。自然の偉大さ。生きることの困難と、だからこそおもしろいと思えること。これは映画が映画であることを証明するための挑戦でもある。

 この映画は本物の迫力を求める。かっての大作映画のようなスタンスを大事にする。CG全盛時代に本物志向を見せる。確かにそれは必要だ。今、なんでもありの世界で昔ながらのアナログ嗜好を展開する。壮大なスケールはあくまでも一人の女の生き方に還元される。ありとあらゆる要素をすべて彼女の目線から描く。とてもわがままな映画だ。でもそういうスタンスがこの映画を納得のいくものにした。

 なぜ今この映画が作られるのか、という問いかけに対する答えは見えない。だが、この壮大なスケールのメロドラマを通して忘れかけていた映画ならではの世界を思い出す。大事なのはそれだけのことなのかもしれない。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ダンスの時間vol.21 | トップ | 桐野夏生『東京島』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。