桐野夏生『東京島』

　無人島に漂着した男女、というのを描いた作品は今までもたくさんある。だが、そこに、さらに２０人以上の男が流れ着く。男女比は３１対１！　これはおぞましい。そう、この小説はおぞましすぎる。だから読むのがつらかった。ノンストップ・サバイバル・ノベルらしい。想像を絶する話が展開していく。だが、この状況なら充分ありえる。それだけになんとも言い難い。予想通りの展開となる。グロテスクだ。だが、しかたない。

　この話はとてもリアルでつらい。さらにつらいことにはヒロインの清子に感情移入出来ないのだ。これはまぁ当然のことかもしれない。この環境ではどんな人間でも壊れてしまう。人間の嫌な面ばかりが剥き出しになる。本能のまま生きたなら死んでいくしかない。生き延びるためにはありとあらゆることをする。そんな人間の生き様から目を背けたくなる。ということで綺麗ごとではないから、これは嫌な小説になる。で、途中で読むのを止めたかったが、なぜだか止めれなかった。それって、これから逃げるみたいで。

　エピローグの『有人島』まで含めて、後味悪い。悪趣味だとは言わないが、とんでもなく嫌な気分にさせられる。それでもよければ読めばいい。僕は勧めない。『ＯＵＴ』も嫌な話だったが、あれは好きだったのだが。作品としての完成度も低い。小説としての品もない。だが、品ってなんだ？　下品な小説とか言うのではない。セックスをあからさまに描いているのはこの状況なら当然だろう。別にこれ見よがしのエロチックなシーンはない。ただ、、なんだか後味が悪いのをそんなふうに言ってみただけだ。たぶん。