こういう映画は、何をさておき劇場の大スクリーンで楽しんで欲しい。お茶の間のDVDで楽しむには惜しい作品なのだ。ただのアクション映画だからこそ、映画館がよく似合う。
実はこの7、8月は忙しすぎて疲れが取れないまま今日まで来た。なのに、個人的な事だが、仕事で、うまく結果が出ずがっかりしていた。あれだけ頑張ったのにうまくいかない、そんなこともある。
だから、今は何も考えず、アクションを見て、ハラハラドキドキしたかった。B級活劇だけど、つまらないダラダラではなく、ラストまで、息つく間もなく、いろんなことを忘れて映画だけに集中できる。そんな映画が見たかった。それこそ、本来の正しい映画の在り方だと思う。
だけど、今の時代、そんな映画が、なくなってしまった。十二分にお金を注ぎ込んだ大作はある。とてもCGには見えないような目も眩むようなアクションを華麗に展開してくれるような映画も多い。(と、言っても、それってもちろんCGだけど)そんな中、昔の『大脱走』や『パピヨン』のような本物のアクションがなくなってしまって久しい。
この夏、『ダイハード4・0』『アポカリプト』の2本はかなりよく頑張っていたと思う。とても新鮮だった。でも、それでも物足りないものを感じたのも事実だ。もっと当たり前の映画が見たい。単純に映画を楽しみたい。
そんな切なる願いを実現してくれる映画が、実はこの夏公開されていた!あまりに、地味で、目立たないから、あまり知られてないが、見た人を唸らせて、細々と今も上映中である。お待たせしました。ここまでが前フリです。
『ザ・シューター 極大射程』。この安っぽいタイトルと、マーク・ウォールバーグ主演という地味さ。スターなのに、ここまでインパクトのない人も珍しい。三番街シネマでひっそりと6月から公開され、ホクテンザに移ってこの24日までロングランされている。この渋い映画は、昔ながらのアクションなので、ストーリー自体は何らセンセーションを呼ぶものではない。「合衆国対狙撃手」、なんていうコピーも今時どうかと思う。
だが、大統領暗殺犯の汚名を着せられた男がたった一人でアメリカ中を敵にまわして、自らの潔白を証明し、犯人たちを血祭りに挙げていくまでを、肉弾戦、頭脳戦を交えて、力と力、知恵と知恵のぶつかり合いで、スリリングに描いていく。
この「単純な映画」は全く単純でなく、ハラハラドキドキの2時間6分なのである。『ダイハード4・0』が同じ上映時間なのに、後半飽きてきて、少し長く感じたのに、これは全くそういうこともない。ラストまで、息つく間も与えない。
最後の最後まで戦い抜く、とても気持ちのいいアクションである。昔のスタローン(『ランボー』とかね)のような胡散クサさもなく、かっての『ブルーサンダー』の頃のジョン・バタムを思わせる。ジェリー・ブラッカイマーの物量作戦が時代の本流になってしまったことで、失われてしまった抑制の効いた映画。ことさら傑作と褒め散らすことはないが、しっかり、胸に留め、満足感の残る映画である。