今年の2月、大阪で上演された久野那美さんの最新作『点転』のリニューアル・ヴァージョンである。もともとこの作品自体が以前に『・・・』として上演された作品のリニューアルである。こんなふうにして1本の作品は様々な変化をしながらどんどん進化していく。
2月のこの作品は圧迫感のある狭い空間(スペースコラリオン)で演じられたものだったが、5月の埼玉公演(コミュニティセンター進修館)では、一転してだだっ広い空間で上演された。今回の『点転+』は、埼玉での映像が使用された。そして、ただそれだけで両者はまるで違う作品のような印象を残した。なんとも不思議な気分だ。それは自分が見た芝居とは別物に見える。
葬儀にやってきた人たちが故人から借りていた(押し付けられていた?)彼の著作を返しに来る。その残されたたくさんの小説。その中から、ある1冊が選ばれる。その小説の中で描かれる競技である点転。それは小説から飛び出してリアルなスポーツとして今では世界大会までもが開かれている。
オリジナルの芝居は、葬儀、小説、小説の中で描かれるもの、という図式の中から見えてくるものが描かれるのだが、今回の作品は『点転』が描かれる小説ではなく、他のSF小説がメインになる。宇宙船での死者。その弔い。そこでは、出発と同じメンバーでの帰還が不可になったことが描かれる。前後の演劇パートはこの宇宙船からの帰還後が描かれる。
いや、この小説もまた『点転』なのかもしれない。きっと死者の残した小説はすべて『点転』なのだ。どんなふうにも姿を変える『点転』という作品を巡るこの作品自体がもちろん点転そのものなのだ。そんなふうにして点転はどこまでも増殖していく。