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映画・演劇のレビュー

あみゅーず・とらいあんぐる『ほどらひの夢』

2022-07-03 12:20:58 | 演劇

「しゃば・ダバ・だぁリーディング その11」である。あみゅーずは、毎年7月、11年間連続でこのリーディングスタイルでの夏公演をしている。毎回いろんな工夫を凝らしていくうちに、彼女たちは「リーディング演劇」というものを定着させ、極めたのではないか。今回、今までで一番完成度が高い作品に仕上がっている。

取り上げたのは中島京子、川上弘美、山崎マキコの3人の作品だ。先の2人はおなじみのみんなが知っている作家なのだが、山崎マキコという人だけは、(僕は)知らなかった。作品のレベルが前2作と較べると甘い。だから若い作家なのかな、と思った。そこでちょっとウイキで調べてみたら、なんとこの作品『ちょっと変わった守護天使』は長編だと知る。あみゅーずはまさかの長編作品のアレンジにも挑戦していたのか、と驚いた。

7人のキャストが素晴らしい。7人がそれぞれ1篇ずつ主人公になり、3話が展開する。2,3人によるお話に、語りでそれ以外のキャストが参戦する。そんな役割分担も見事にはまっている。最初の『妻が椎茸だったころ』の軽妙な語り口。妻の死、さらには料理教室への参加と、戸惑う男を響音次郎が情けなさげに演じる。凛としたたたずまいの妻(鶴留真由)、料理教室の先生(思い野未帆)とのやりとりも絶妙だ。2話目のわたし(笠嶋千恵美)と飄々とした魔人ハンターミツルギ演じる先祖とのやり取りもそう。ありえないようなお話に引き込まれていく。ラストの3話は、少しひねりが足りない。そう思ったのは、長編小説のダイジェストだったからだろうか。でも主役の2人(条あけみ、谷屋俊輔)のコミカルな芝居に引き込まれて、ほっこりした気分に包まれる。

ほどらひの夢、というタイトル通りのお芝居で、その匙加減が素敵だ。ほどほどの夢。不思議で、でも、あり得ないだろうけど、あり得そうで、あり得たならいいなぁ、と思う。そんな心地よい夢の世界を提示してくれる。これは至福の時間だった。


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