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映画・演劇のレビュー

『デイ・ウォッチ』(ディレクターズ・カット)

2008-10-18 08:51:09 | 映画
 『ウォンテッド』があまりに素晴らしすぎてこの監督の前作『デイ・ウォッチ』も見ることにした。ロシアのティムール・ベクマンベトフである。彼の日本デビュー作でありこの作品の前作でもある『ナイト・ウォッチ』を見た時にはがっかりした。凄まじいアクションとSFXを駆使した破壊的な超大作なのだが、すごい、スゴイといっているうちにだんだん飽きてきて何が何だかわからなくなった記憶がある。この人は駄目だ、と思った。

 だからハリウッド進出第1作である『ウォンテッド』もあまり期待はしてなかったのだ。なのに、あんなにも革命的な映画になっていて嬉しい驚きだった。彼の過剰なイメージの噴出が的確てコンパクトな台本を得て開花した作品だった。ハリウッドの商業主義が彼の過剰さに歯止めをかけた結果バランスのいい作品に仕立てることを可能にしたのだ。

 そのことは今日『デイ・ウォッチ』を見てはっきりした。実は昨夜この映画を見てがっかりしたのだ。前半はすごいイメージと凄まじいスピードに圧倒されたのだが、だんだんついていけなくなり、食傷気味となり、気付くと飽きていた。これって『ナイト・ウォッチ』の時と同じだ。見ながらがっかりしていた。2時間半もあるディレクターズ・カット版なので、長い長い。見終えたときにはクタクタだった。

 だが、なんだかとても気になり今、メイキングを見たら、これがとても面白い。30分があっという間だったし、映画の内容がとてもよくわかった。これってなんだ?要するに映画のお話がまるで理解できてなかったということではないか。メイキングもすごいスピード感だったが、映画はその比ではない。要するに途中で振り落とされて、理解不能になったからつまらなかった、というわけなのだ。一見単純な話に見えて、まるで説明なしに、問答無用でずんずん進んでいく。全体の構成力のなさから、ついていけなくなるのだ。だから、つまらない、と投げ出しただけ。

 今もう一度、いくつかの場面を見直したのだが、改めてなるほど、と理解できた。それって、なんだ?正直言おう。僕がバカだから、ついていけなかったのだ。だが、もっと正直に言おう。僕ですらついていけないような映画を作ったティムール監督のほうが悪い。(ロシアでは空前の大ヒットをしたのだから、ロシア人はみんなこのレベルについていけたということなのだが)

 説明なんかしないで、凄まじいスピードで闇と光の2つの世界の対決が描かれていく。あれよあれよという間にどんどん話が先に進む。目も眩むようなアクションの連続に消化不良を起こす。そんな映画だ。たるいハリウッドの娯楽大作映画しか見てない観客にはついていけまい。だが、世界観の深化がないから、単純すぎて、ついて行けない部分もある。これだけの情報量をぶちこんで、このスピードでは正直つらい。緩急がない。急なばかりだ。だが、アクションの限界に挑んだ作品であることは事実。目撃せよ! 

 DVDは劇場公開版よりも15分長いが、それでも話はよくわからない。5時間くらいは必要なのか。

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