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映画・演劇のレビュー

コトリ会議『新しい。びゅいーん、瓶』

2011-02-10 22:40:34 | 演劇
 こんなにも短いスパンでの再演である。そこで大きな冒険をするなんてことは到底不可能だ。だからといって前回の舞台をそのままここに持ってくるのもつまらない。ということで、見せ方のスタイルを変えることで、同じ作品がまるで違ったものとなる瞬間を提示することとなった。この企画自体のお約束は、ちゃんと守りながらも新しいビュイーン瓶を作る。

 見せ方のスタイルをほんのちょっと変えただけで、このお話の方向性すら変えてしまうことになったのが面白い。前回の四方を客席とした舞台から普通のスタイルに戻すことによって、作品はよりシンプルな寓話として再構築された。そして、前回以上に見やすいものになっている。

 この作品にあった不安な気分が、そのスタイル変更によって薄まってしまい、ひたすらに優しい世界に包まれることとなったのはほんの少し残念だが、この優しさは悪くはない。100年の歳月をかけて地球を離れ、この星にやってきた2000人ほどの人たち。彼らの内面を、ほんの数人のささやかなドラマを通して描く。

 この物語はひとつのおとぎ話として、この地の果てで生きることの悪夢が見えてくるようになっている。このお話自体にはこれといった仕掛けはない。単純なストーリーをあっさりと見せていく中から彼らの孤独が浮かび上がってくる。ちっぽけな人間たちが小さな世界の中で右往左往していく滑稽な姿を通して生きていくことの寂しさを描き出す。

 これはもともとコトリ会議としては取り立てて優れた作品というわけではない。だが、とてもシンプルな構造を、更に単純なものとすることによって、物事の核心に一気に触れてくる気持ちのいい作品となったのはよかった。


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