なんて静かな映画だろう。こんなにも温かい気持ちになれる映画もめずらしい。なんとなくあざとい話ではないか、なんて思っていたのに、まるでそんなことはない。気取ることもなく、ただ淡々と納棺師なんていう不思議な仕事に就いた男の日々を綴っていく。
東京でオーケストラに所属し、チェロを弾いていた音楽家なのに、楽団が解散し、職を失い、しかたなく、故郷である山形の町に帰って来る。そして、偶然にこの仕事をすることになった。最初はとんでもない、と思った。すぐに辞めるつもりだった。なのに、静謐な死者の世界に触れて、死んでしまった人の旅立ちのお供をちに、なんとなくこの仕事に生きがいを感じることになる。職業に貴賤はない、なんて言うけど、死体に触れて彼らの世話をするなんて、なんだかいい気分はしない。そんなこと当然だ。妻(広末涼子)はこんな仕事辞めて欲しい、と言う。いくら給料がいいとはいっても、気味が悪いし、世間体もよくない。そんなふうにおも思うのは当然のことだろう。だが、彼は次第にこの仕事が好きになる。
主人公の本木雅弘がいい。自然な彼のたたずまいがこの映画の静寂を形作る。ユーモア溢れる映画だが、全然下品にはならない。かといって気取った映画にもならない。あくまでも自然なのだ。滝田洋二郎監督は前作『バッテリー』でも、あの題材をあざとさのない映画に仕立ててくれた。今回も同じように、ある種のパターンになりそうな題材を、こんなにも新鮮で清々しいものに仕立てることに成功した。べたにはならない。抑制が効いている。見事としかいいようがない。
東京でオーケストラに所属し、チェロを弾いていた音楽家なのに、楽団が解散し、職を失い、しかたなく、故郷である山形の町に帰って来る。そして、偶然にこの仕事をすることになった。最初はとんでもない、と思った。すぐに辞めるつもりだった。なのに、静謐な死者の世界に触れて、死んでしまった人の旅立ちのお供をちに、なんとなくこの仕事に生きがいを感じることになる。職業に貴賤はない、なんて言うけど、死体に触れて彼らの世話をするなんて、なんだかいい気分はしない。そんなこと当然だ。妻(広末涼子)はこんな仕事辞めて欲しい、と言う。いくら給料がいいとはいっても、気味が悪いし、世間体もよくない。そんなふうにおも思うのは当然のことだろう。だが、彼は次第にこの仕事が好きになる。
主人公の本木雅弘がいい。自然な彼のたたずまいがこの映画の静寂を形作る。ユーモア溢れる映画だが、全然下品にはならない。かといって気取った映画にもならない。あくまでも自然なのだ。滝田洋二郎監督は前作『バッテリー』でも、あの題材をあざとさのない映画に仕立ててくれた。今回も同じように、ある種のパターンになりそうな題材を、こんなにも新鮮で清々しいものに仕立てることに成功した。べたにはならない。抑制が効いている。見事としかいいようがない。