難病ものの映画なんて見たくもない、と思うのだが、この映画はちょっと見てもいいかも、と思わされた。それは、これが死と向き合うこと以上に、生きていることの奇跡をちゃんと描こうとしているように思えたからだ。
そんな事前の予想はちゃんとあたって、これはなんとも素敵な映画に仕上がっていたのがうれしい。ただのお涙頂戴ではない。生の輝きに満ちあふれた映画である。でも、死という事実からも、目を背けることなく、そこもちゃんと描いている。監督は星護。とても誠実でいい人だ。主演はもちろんいい人である草剛だ。日常生活の描写を大事にしたのもいい。そこを抜きにしてこのリアリティーは生まれない。
SF作家である夫が書く小説を視覚化したエピソードを随所に挟み込み、そのファンタジックな映像のより心を和ませてくれる。(小日向文世がやった火星人の郵便配達人の話が最高におかしい!)それは本来は、観客である僕たちのためではなく、妻のために書かれた話だ。癌になった彼女のため1日1編の小説を書き、彼女を笑わせること。それが彼に出来る唯一のこと。それを日課にして2人で病気と闘い、最後まで諦めず、生きる。これはそんなお話である。
とても素直な映画だ。時代背景を現代にはせず、今からほんの少し昔、まだケータイもなく、街の風景も優しかった頃のお話にしてある。それ以上の厳密な時代設定はしていない。温もりのある街並み、古い日本家屋。慎ましい生活。そんな中で、若い夫婦がひっそりと生きている。主人公はSFを書いて生計を立てている。裕福ではないが、銀行で働く妻と共稼ぎでなんとか生きている。売れる小説、たとえば恋愛小説なんかを書ければいいのだが、融通がきかないから彼には無理だ。不器用で、しかも、興味がないから売れる恋愛小説は書けない。妻はそんな彼を誇りに思う。お金なんかなくても自分たちは幸せだ、と思う。なのに、彼女が癌になり、医者からは進行が早くあと1年の命という酷い宣告を受ける。
映画を見ながらなんだかとても優しい気持ちになれた。大好きだから、彼女との時間を大切にする。1日でも長く、彼女の笑顔を見ていたいから、1日1日を大事にする。そんな2人の5年に及ぶ日常のスケッチである。ドラマチックな展開は極力廃して(闘病記なので、それだけでドラマチックにならざるを得ないが)2人のなんでもないささやかな時間を積み重ねて見せていく。先にも書いたが、彼が書く毎日の小説はそのいくつかが実際に視覚化され随所に提示されていく。とてもほのぼのとした話ばかりだ。笑えるし、ほっこりさせられる。
ドラマの終盤、2人で北海道に行くシーンがある。新婚旅行も出来なかったから、これがその代わりとなる。でも、きっとこれが最後の旅行になることは暗黙の了解事項だ。大好きだった風景に出会うための旅。部屋に飾ってあった写真の場所に行く。丘の上の大きな木の下。そこに2人がやってくるこの幸福なシーンで映画が終わればいい、と願った。もう充分だ、と思う。
だが、その後、彼女が死ぬまでをこの映画は丁寧にフォローする。目を逸らさない。辛くて見ていられないがこれが事実だ。ちゃんと最期まで、彼女を看取る。この生真面目さも含めて、これはほんとうにいい映画だ。こういう誠実な映画を大事にしたい。
そんな事前の予想はちゃんとあたって、これはなんとも素敵な映画に仕上がっていたのがうれしい。ただのお涙頂戴ではない。生の輝きに満ちあふれた映画である。でも、死という事実からも、目を背けることなく、そこもちゃんと描いている。監督は星護。とても誠実でいい人だ。主演はもちろんいい人である草剛だ。日常生活の描写を大事にしたのもいい。そこを抜きにしてこのリアリティーは生まれない。
SF作家である夫が書く小説を視覚化したエピソードを随所に挟み込み、そのファンタジックな映像のより心を和ませてくれる。(小日向文世がやった火星人の郵便配達人の話が最高におかしい!)それは本来は、観客である僕たちのためではなく、妻のために書かれた話だ。癌になった彼女のため1日1編の小説を書き、彼女を笑わせること。それが彼に出来る唯一のこと。それを日課にして2人で病気と闘い、最後まで諦めず、生きる。これはそんなお話である。
とても素直な映画だ。時代背景を現代にはせず、今からほんの少し昔、まだケータイもなく、街の風景も優しかった頃のお話にしてある。それ以上の厳密な時代設定はしていない。温もりのある街並み、古い日本家屋。慎ましい生活。そんな中で、若い夫婦がひっそりと生きている。主人公はSFを書いて生計を立てている。裕福ではないが、銀行で働く妻と共稼ぎでなんとか生きている。売れる小説、たとえば恋愛小説なんかを書ければいいのだが、融通がきかないから彼には無理だ。不器用で、しかも、興味がないから売れる恋愛小説は書けない。妻はそんな彼を誇りに思う。お金なんかなくても自分たちは幸せだ、と思う。なのに、彼女が癌になり、医者からは進行が早くあと1年の命という酷い宣告を受ける。
映画を見ながらなんだかとても優しい気持ちになれた。大好きだから、彼女との時間を大切にする。1日でも長く、彼女の笑顔を見ていたいから、1日1日を大事にする。そんな2人の5年に及ぶ日常のスケッチである。ドラマチックな展開は極力廃して(闘病記なので、それだけでドラマチックにならざるを得ないが)2人のなんでもないささやかな時間を積み重ねて見せていく。先にも書いたが、彼が書く毎日の小説はそのいくつかが実際に視覚化され随所に提示されていく。とてもほのぼのとした話ばかりだ。笑えるし、ほっこりさせられる。
ドラマの終盤、2人で北海道に行くシーンがある。新婚旅行も出来なかったから、これがその代わりとなる。でも、きっとこれが最後の旅行になることは暗黙の了解事項だ。大好きだった風景に出会うための旅。部屋に飾ってあった写真の場所に行く。丘の上の大きな木の下。そこに2人がやってくるこの幸福なシーンで映画が終わればいい、と願った。もう充分だ、と思う。
だが、その後、彼女が死ぬまでをこの映画は丁寧にフォローする。目を逸らさない。辛くて見ていられないがこれが事実だ。ちゃんと最期まで、彼女を看取る。この生真面目さも含めて、これはほんとうにいい映画だ。こういう誠実な映画を大事にしたい。